誤解

世界各国では日本全体が放射能汚染され、死の灰や死の雨が降っているかのように誤った伝えられかたをしているらしい。

食料品はおろか、工業製品や電子部品にいたるまで放射能検査してから輸出せよと要求されるのも致し方が無いと言ったところか。

外国人観光客が激減し、閉鎖や一時休業に追い込まれた旅館やホテルもあるが、その誤った情報の伝わりかたに憤ったり怒ったり、嘲笑ったりしても仕方がない。

日本国内であってもさして変わらないではないか。

大震災発生当初から今までの報道を見ていると、まるで東北地方が全滅してしまったかのような錯覚をしてしまう。

もっと軽くても青森、岩手、宮城、福島の4県は壊滅してしまったように思えてしまう。

実際には、その 4県の海岸部だけが集中して報じられているだけで、県のすべてが瓦礫の山と化してしまったわけではない。

あれだけの地震だったのだから建物が倒壊したり道路が寸断されたりして内陸部の被害も相当なものだろうと思われるが、とにかく津波に呑み込まれたのは沿岸部だけのことである。

国内でさえ東北地方全域が破壊されてしまったようにイメージしてしまう報道のされかたをし、普通に生活している方もいらっしゃることを忘れてしまうのだから、海外に日本全体が壊滅したと伝わってしまっても文句は言えないだろう。

もうひとつの誤解といえば放射能に関してだ。

まるで感染するかのような扱いをした自治体の無能さに関しては数日前の独り言で触れたが、生鮮食料品に関する風評被害も止まらない。

最初に出荷を停止されたのは茨城県産の小松菜などだったが、茨城県で生産された野菜はすべて危険であるかのようなイメージを持ってしまった人も多かっただろう。

事実、出荷制限の対象になっていなかった茨城県産のレタスを捨ててしまったのは我が母だ。

手元にあるものは出荷制限の発表がある前に出荷されたものに決まっているし、ましてやレタスは制限されていないにも関わらず、負のイメージだけが脳内で増幅されてしまって廃棄という暴挙に及んだものと思われる。

我が母は元々神経質な面を持ちあわせているが、同様の振る舞いをしてしまった人は少なからずいるだろう。

店頭に茨城県産の野菜などを陳列していても売れ残ってしまうため、販売店も仕入れなくなるという悪循環が生まれて生産者を追い込む結果となる。

どこかで負のスパイラルを断ち切らなければならないが、ヒステリックな報道ばかり見せられると人は萎縮してしまい、間違った考えに偏ってしまう。

やれ人体に与える影響だの、摂取量がどうしたの、母乳への影響、それによる乳児へのリスクなど、恐怖心をあおる内容が 95%で、残りの 5%程度の時間を使って食べても心配するレベルではないと結ぶ。

延々とリスクを並べ立てたあとに 30秒くらいフォローするのが客観的な報道と言えるだろうか。

様々な報道やテレビ番組で何度も言われていることではあるが、放射能の含有量などレントゲンや CTスキャンで浴びる放射線量の数百から数千分の一というレベルでしかない。

その程度のものを腹一杯になるまで食べたところで人体に影響があるはずがない。

そんなことでガタガタ言うなら、一年に何度も X線や CT検査を受けている 『お買い物日記』 担当者はどうなる。

第一、最近になって重宝がられているカット野菜など、異物混入を防ぐために X線装置を通して検査しているのだから、測定したらビックリする量の放射能が検出されるかも知れないだろう。

少しは冷静になって、少しは想像力を働かせて、少しは自分で考えて、報道に振り回されることなく生活していただきたいものである。