一極集中

社会問題、政治問題にもなっている中央と地方の格差。 とくに最近はその傾向が顕著に表れているように思う。 それは景気回復だったり地価上昇などという経済的側面のことではなく、自分程度の人間が感じるのはメディアに対してである。

今月初めに行われた東京都知事の選挙にしてもそうだが、都民以外には大きく関係しない話題であるにも関わらず、石原閣下の独善ぶりとか、笑いを通り越して気持悪さ倍増の黒川紀章氏とか、ドラマチックに失敗した浅野史郎氏の顔が、テレビなどで毎日のように映し出される。

日本の首都である東京の長が誰になるのか、国際都市東京の構築には誰が相応しいのか、そして世界に向けて日本の情報をどのように発信していくのか、それは地方にとっても大切なことではあるが、いかんせん投票権すらないのだから、結果だけ分かれば十分であり、事前の選挙戦など毎日のように見せられても何の興味も湧かない。

現在、日本の総人口は約 1億 3千万人で、東京を中心とした首都圏の人口は 3千万人と、実に日本の人口の 23%を占めている。 したがって、テレビも首都圏を対象としておけば、ある程度の視聴率を稼げる訳なので、 「東京を中心に編成すれば良い」 という安易なものが目立つ。

グルメ番組も都内の美味しい店、何らかの情報紹介も東京が中心。 東京に住む気などなく、ましてや遊びに行く気すらない人にとっては、まったく必要のない情報だ。 これで最近の視聴率の低迷を嘆く方がおかしい。 インターネットの普及やら娯楽性の多様化など、もっともらしい言い訳をあげつらうが、実際のところは多くの人が楽しめる番組を製作できない側に大きな問題があるように思う。

地方に住んでいると、東京発信の情報よりも、住んでいる土地発信の情報の方が楽しいし、役に立つ。 六本木やら神楽坂やらの洒落た店の紹介よりも、安くて美味しく、腹一杯になる地元の店の情報が気になる。 主婦層をターゲットにしている昼間から夕方にかけてのローカル番組を一家団欒のゴールデンタイムに放送した方が視聴率が高いのではないかと思えるくらいだ。

日本第二の都市であった大阪も、景気の良い名古屋に抜き去られ、底なしの地盤沈下を続けているように思うが、市や府、官僚は裏金を作ったり談合したりするのに忙しく、財政破綻寸前だというのに何の危機感も持っていないようだ。 大阪で大きくなった企業が本社を東京に移すのを指をくわえてみているだけで、必死に食い止めようとしたり、逆に誘致活動をして呼び込むことすらしない。

吉本の芸人さんも下積み時代を大阪で過ごし、有名になって高額所得者になると東京に行ってしまう。 つまり、大阪からは人も企業も高額納税者が出て行き、東京の税収がどんどん増える構図だ。 九州や沖縄のように優遇税制を導入したり、通信、電気などで補助金を出したりして必死に誘致活動をしているところに経済規模や人口推移で負ける日も近いかもしれない。

そういう観点からすると、東京の知事などどうでも良く、大阪府知事の方が重要であり、前の横山(エロ)ノック氏や、現在の太田(デメキン)房江女史なんぞに府政を任せてなどいられない件の方が府民にとって重要で、石原氏の激しいまばたきや黒川氏の気持悪い姿などテレビで観ている場合ではないのである。

東京をロンドンやニューヨークのように世界に通用する都市にすることに異存はない。 しかし、政治の中心であるワシントン的都市や、いろいろな機能を持つ都市だって必要だろう。 人口が一極集中するのは避けられないとしても、金や情報までもが一極に集中し、地方が疲弊している現状が正しいことだとは思わない。

そして、東京を中心としたテレビ番組など見たくもないので、地方のテレビ局には是非とも頑張っていただきたいと思っている。 しかし、制作費を補えるほどの大きなスポンサーが、東京にしかないという一極集中の現実が、ここにも厳然と存在したりするのではあるが・・・。