マサルノコト scene 24

思い出そうとしても、それがどういう理由だったのか定かではないのだが、マサルとノブアキの二人が自分の住むアパートを訪ねてきたことがあった。

三人とも暮らす場所はバラバラだったのに、どうしてマサルとノブアキがその町で合流したのか、そして、何の用事があって尋ねてきたのか。

とにかく何だか良く分からないが久々に三人が集まったのである。

最初は思い出話や近況など報告しあい、話しに花を咲かせていたのであるが、なにせ男同士なのでペチャクチャと話すこともそれほど続かない。

ましてや尋ねてきたのが昼間であり、酒が入っているわけでもないので余計に話が盛り上がるはずなどないのである。

そこで何となく家庭用ゲーム機で遊び始めたのが間違いの始まりだったのかもしれない。

選んだソフトはプロレスのゲーム。

無類のプロレス好きであるマサルは目の色を変えて遊びに没頭し始めた。

自分はゲーム制作会社に身を置いていたのでテレビゲームなど毎日目にしていたが、普段はゲームなどしないマサルとノブアキにとっては新鮮だったようで、どんどんゲームの世界にのめり込み、必死になって戦いを繰り広げている。

その戦いは終わることを知らず、どちらが勝っても負けても
「もう一回!」
と、どんどん深みにはまっていくようだ。

時間はどんどん経過して、ついにあたりが暗くなり始めた。

その日、我が家で少し遊んだ後はマサルの運転する車にノブアキを乗せて、三人共通の故郷まで帰省する予定でいたのだが、すっかりゲームに夢中になってしまった二人は予定を変更して泊まっていくと言い出した。

そのころの我が家には常に誰か彼か友達が遊びに来ており、夜を徹して遊ぶことなどざらだったので二人が泊まっていくのに何の支障もない。

とりあえず晩御飯がてら居酒屋に行き、しこたま食べて飲んで語り明かした。

帰宅後は再び戦いが始まり、それは深夜にまで及んだので翌朝早くに出発できるはずがない。

何となくテレビゲーム機の電源を入れ、戦いが始まるともうだめだ。

「もう一回!」
が部屋にこだまし、エンドレスに戦いは続く。

結局、マサルとノブアキが何泊したのか、どうやって帰省したのか、はたまた本当に帰省したのか今となっては思い出せもしないが、それからしばらくの間、マサルの母親から
「君と遊んでばかりでさっぱり家に帰ってこない」
と責められたものだった。

自分の場合もそうだが、帰省して親の小言を聞いているより友達と遊んでいるほうが楽しいに決まっている。

そんな訳で帰省のたびに三人で会い、酒を酌み交わす日々はまだまだ続いていくのであった。