歯医者四軒目-後編-

過去に通った歯医者

先週の雑感に書いたように差し歯の一本がグラグラになっており、レントゲンを撮った結果、土台となっている自分の歯が割れてしまっていることが判明した。

土台がダメなのであれば何度歯を入れ直しても無駄というものであろうし、安定せずにグラグラした状態のままでは気になって前歯を使うこともできない。

もう 「かまわねぇ、ずっぽりと抜いてくんな」 的な江戸っ子ばりの覚悟をしたが、問題となっている歯を左右の歯に固定して支えるという技を駆使して治療する方針が示された。

こちらとしても痛い思いをして抜かれるより少しでも楽な方法があるのであれば大歓迎であるので、その方針に素直に従い、結果的に歯が抜かれることはなく治療が終わった。

前の歯医者では親知らずを三本も抜いていたが、とうとう左下に最後の一本が姿を現した。

そいつがとてもひねくれた奴で、もの凄く斜めに生えてきたものだから途中で奥歯と接触して進路を阻まれ、中途半端に顔を出したまま成長を阻害されている。

またその角度が微妙な具合で、とても高い確率で食べ物が挟まってしまい、食事のたびに爪楊枝のお世話にならなければならず、相当なストレスを感じていたのだが、親知らずなんていうものは生えてきたら抜かれることが多く、ましてや変な生え方をしているのだから当然の事ながら抜かれるものと思われた。

今度こそは 「かまわねぇ、ずっぽりと抜いてくんな」 と覚悟して相談したが、食べ物が挟まる場所を埋めることで対処し、やっぱり抜かれることはなかった。

その治療方針は自分としても精神的苦痛、外的苦痛を受けることがないので好感が持てたが、実は先生が血を見るのが嫌いだったのではないかとちょっと疑ったりしている。

真相がたとえどうであれ、歯を抜かれることもなく、そして以降に何の問題もないのであればわざわざ痛い思いをしてまで抜歯してもらう必要などないだろう。

お買い物日記』 担当者に歯医者さんがとても優しく、あえて大規模工事のような治療をせず、必要最低限の治療をしてくれることを伝え、それからは二人で通うようになった。

『お買い物日記』 担当者も先生のことが気に入り、その的確な治療方法、すぐに抜くことはしない治療方針を二人で褒め称え、紹介してくれたご近所さんに感謝したものだ。

それからは二人で半年に一度、何も問題が起きていなくても検査を受けに行くことにしていた。

自分では気づかない小さな虫歯ができていないか、歯石がついていないかなどを診てもらい、最後に歯をクリーニングしてもらう。

たまに極々小さな虫歯が発見されることもあったが、本当の初期であるため簡単な治療で終わるので何度も通う必要がなく、また、痛い思いをするほどの治療にもならない。

医者と患者の良好な関係を保ちつつ長年お世話になった歯医者さんだったが、遥か北の大地に引越しすることになっては二度と通うことができない。

大阪を旅立つ日、JRの駅に向かう途中で歯医者さんを訪ねて長年お世話になったお礼を言い、引越しする旨を告げてから千里丘を後にしたのであった。