“で” と “が” で大違い

日本語は難しいもので、ほんの少しの言い回しや言葉の使い方、選び方で相手に与える影響が大きく異なったり、良い印象を与えたり逆に悪かったり、時には伝わる意味まで異なってしまう場合があるので注意が必要だ。

アメリカ大統領に就任したオバマ氏の演説が好評を博し、関連本が発売されたり英語の教材として取り上げられたりしているが、これは日本の総理大臣にこそ勉強して頂きたいものであり、見習って頂きたいものであり、言葉の持つ力と言うのは極めて重大であって、逆に言えばマイナス効果というのも時によって計り知れない場合があるので注意が必要だと認識していただきたい。

我々庶民においても注意を必要とする場合がある。

仮に取引先のお偉いさんと会食の場なんぞ設けられたと仮定する。

相手にとっては行きつけの店であってもこっちにとっては初めての店。

何が美味しいのか何がお薦めなのかも分からない。

相手より高額なものを注文する訳にもいかず、かと言ってあまり低額なのも何である。

ここで陥りやすい間違いは、相手が注文したものに合わせて
「私もそれでいいです」
などと言ってしまうこと。

「それでいい」 とは何だ 「それで」 とは!?

考えるのが面倒だから 「それでいい」 のか、どれもこれもパッとしない料理だから適当に 「それでいい」 と答えているのか。

相手と同じものを食べたい、美味しそうだから自分もそれを食べたい。

そう思っているのなら、そんな時は
「私もそれ “が” いいです」
が正解だろう。

もっと言えば
「私も同じものが食べたいです」
であり、「それ “で”」 と 「それ “が”」 では大違いなのである。

テレビ、映画、漫画、何でも良いのだが、恋愛ドラマ系のセリフも同様だ。

「君はそのままでいい」
などと言った日には、もう諦めてどうでもよくなっているのかと受け止められかねなく、一歩間違えると百年の恋も一気に冷め、一瞬にして奈落の底に叩き落される危険性をはらんでいる。

相手に変わらずにいてほしいことを表現、伝えたいのであれば
「君はそのまま “が” いい」
が正解であろう。

ことほど左様に “で” と “が” では大違いな場合があるが、大多数の人にとって
「君はそのままがいい」
などというくっさいセリフを吐くシーンなど、そうそう訪れるものではないので気に留める必要もないのかもしれない。