しっぺ返し

まだまだ 『派遣切り』 は終わりそうもなく、年の瀬だというのに職を失い、住む場所まで奪われる人がいるのは誠に気の毒だとは思うが、やっぱり今の報道は偏向し過ぎており、必ず弱者に皺寄せという話になる。

3月末までの契約だった人が年末に契約解除されて路頭に迷ってしまうのは分からないでもないが、だからと言ってあと三カ月、正規に契約が切れるまで雇用を継続したからといって何か幸せな、バラ色の未来でも待っているのかといえば決してそんなことがあるはずもなく、三カ月後に景気が回復しているはずがない以上は、2009年の春に起こることが前倒しで 2008年の末に起こっているだけのことだ。

内定取り消しも問題視されているが、心情はどうあれ雇用契約を結んでいない以上は決して違法ではなく、また、ここでもめて内定の取り消しを撤回させたとしても、特に不動産関連は来年の三月まで会社が存在する保証はないだろうし、内定を取り消さざるを得ないということは相当にヤバくなっている証拠なのだから、ここは素直に別の就職先を探すか、大学を留年して来期に賭けた方が良いのではないか。

そうは言っても会社側に問題がないのかと問われれば決してそんなことはなく、半年ほど前まで、労働人口の減少による人手不足から、日本も移民を受け入れるべきだと大騒ぎしていたのは何だったのかという話であり、ここにきて外国人労働者を真っ先に雇用契約解除の対象にしているのはどういうことかと小一時間くらい問い詰めたくなってしまう。

街に職のない外国人が溢れ出し、治安が乱れるかもしれないという事態を想定した上で移民のことを考えたり、選挙権の問題や老後、社会保障の問題まで、移民者に対してどう対処すべきか考えた上で発言していたとは思えず、単に安い賃金で 3K と言われる 『きつい』『汚い』『危険』 な職業や、新3K と言われる 『きつい』『帰れない』『給料安い』 仕事をさせるのが狙いだったのではないか。

外国人労働者を狙い撃ちして切り捨てるようなことを続けていたら、彼らが本国に帰った際に悪評をばら撒かれ、自社のブランドが傷つき自社製品が売れなくなるというしっぺ返しを喰らう可能性も少なからずあることを肝に銘じておくべきであり、派遣切りや雇用調整をしている大企業は、庶民が生活の不安、将来の不安を覚えて消費が縮み、自社の製品が売れなくなるというしっぺ返しを覚悟しておくことだ。

そしてますます業績が悪化し、正社員のリストラにまで手を付け、それは社会不安にまで発展し、さらに消費が冷え込んで物が売れなくなるという負のスパイラルに陥り、価格を下げなければ売れず、価格を下げることによって利益が細り、賃金カットを進めて消費者の財布の紐がさらに固くなるというデフレスパイラルにまで発展していくかもしれない。

企業は社会の公器と言われ、事実それはパナソニックの経営理念でもあり、オムロンの企業理念でもあり、その他多くの会社も理念として掲げているが、今はその公(おおやけ)の器(うつわ)が壊れてしまい、不安や不満があふれ出してしまっている状態で、そんな不安を世の中に与えていることは、将来、大きなしっぺ返しとなって企業に降りかかってくるものと思われる。