今までは子供の頃の記憶、記憶に残っていることを書いてきたが、今回は全くの逆で、どうしても思い出せないこと、逆立ちしても何をしても記憶の奥深くから取り出すことのできないことを書いていこうと思う。
雨の日の散歩をしていると、子どもたちが傘をさしていたり低学年の子はカッパを着せられたりしているが、自分が子供の頃はどうしていたのだろう。
小学生の頃、いや、中学生になっても雨の日にどうやって登校していたのか思い出せない。
雨が降ったからといって学校を休んでいた訳でもないだろうが、傘をさして登校した記憶がないのである。
そもそも何色の傘を使っていたのか、そして、学校に着いてから雨具をどうしていたのか思い出せない。
自分などそそっかしいので学校に傘を忘れて帰ったことも一度や二度ではないと思われるのだが、その一切の記憶がスッポリと抜け落ちていて脳の一部に空白地帯ができている感じだ。
小学校から中学校までの 9年間、晴れた日ばかりのはずはないのに登校の際の雨の記憶がないに等しい。
いったい雨降りの際はどうやって学校に行っていたのだろう。
次に思い出せないのは小学校での上履きだ。
記憶している限りでは、学校の入口にロッカー的なものや靴箱的なものはなかったように思う。
ということは、靴を履き替えた後はどうしていたのか思い出せない。
教室の後ろに棚みたいなものがあったので、そこまで持ってきて入れたりしていたのだろうか。
いや、やはり記憶違いで入り口にロッカーなり靴箱なりがあったのだろうか。
中学生の頃は素行がよろしくなく、家で勉強もしなかったので教科書やノート、筆記用具などの全ては教室の机の中に入れっぱなしにしてあり、手ぶらで学校に行っていた上に校内へは土足のまま入っていたので記憶がなくて当然だが、まだスレていない小学校の頃は何をどうしていたのだろう。
そして同じように記憶が無いのは登校前の朝ごはんだ。
たぶん朝食は抜いていなかったので何かしら食べていたと思うのだが、それがパンだったのか米だったのか、はたまたシリアル系だったのか、一切の記憶がない。
パンに目玉焼きだった記憶もないし、白ご飯と味噌汁だった記憶もないし、シリアルに牛乳だった記憶もなく、子供の頃の自分は朝に何を食べていたのだろうと不思議に思ってしまう。
両親共働きだったので、朝はバタバタしていたに違いない。
中学になると親より家を出るのが遅かったので勝手に何か食べてから家を出ていた可能性もあるが、小学校の時はどうだろう。
一家三人でにこやかに会話しながら朝ごはんを食べた記憶など皆無なのである。
そして、やっぱり思い出せないのは寝間着だ。
パジャマを着て寝ていたのは間違いないのだが、着替えている自分の記憶がない。
いつも記憶がなくなるほどの睡魔に耐えて着替えていたはずもなく、毎日のことであるはずなのにどうやって着替え、脱いだ服をどうしていたのか思い出せずにいる。
小さな頃は親が翌日に着るものを用意していてくれただろうが、中学生の頃はどうしていたのか。
中学は学生服なので朝はそれを着たら良いが、前日の夜に脱いだものはどこにどうやっておいたのだろう。
自分の性格からいって毎回タンスに入れていたはずはなく、かといってハンガーにかけて部屋の壁に吊っておくようなこともしていない。
毎回たたんでどこかに置いていたのか、それとも脱ぎ散らかしたままにしていたのだろうか。
大きなイベントや非日常的なこと、友だちと楽しく過ごしたことなどは覚えているが、あまりにも日常的で、あまりにも繰り返し行うことは無意識にやっているからなのか、ほとんど覚えておらず、記憶を無理に引っ張り出そうとしても出てこないものなのかも知れない。
それとも自分がアホすぎて覚えていないだけなのだろうか。