春遠からじ

長かった北海道の冬も終わり、いよいよ春がそこまで来ているようだ。

散歩をしていると公園の芝生が茶色から緑に変わりつつあるのが目にとまる。

桜の芽も少しふっくらとしてきた。

石垣の隙間から顔だけだしていたスズメも外に出て日向ぼっこしている。

冬の間は聞こえなかった鳥の鳴き声がする。

道行く人の服装も軽く、そして明るい色になってきた。

我が家では除雪用具を片付け、散水用のホースを出して春の準備は万端だ。

昨日の登校を最後に子どもたちは春休みになった。

小学校の高学年になってもラブラブな関係を保っていた父娘がいたが、5年生の 2学期から娘が友だちと通学するようになり、父親が一人寂しそうにトボトボと出勤するなったのは過去の独り言に書いた通りだ。

その娘はどんどん大人になり、去年の 4月からは近所に住む新一年生の手を引いて通学するようになった。

他人の子どもながら、その成長ぶりを頼もしく思ったりしていたが、その娘も今年で卒業で来月からは中学生になる。

2014年の秋に引っ越してしまった黒柴リュウくんが 8歳の時、
「ボクと同じ歳だぁ~」
とニコニコしていた男の子はすでに中学生になっているのだろう。

そろそろ家庭菜園の準備を始めている家もあり、あちらこちらで土いじりしている人もいる。

となりの店の妹ちゃんも、私有地の一画で家庭菜園を始める準備に余念がなく、つい先日も畑の中で草むしりをする姿があった。

毎年のことなのだが、妹ちゃんは
「せっかく種をまいてもほとんど風に飛ばされちゃてさぁ」
「半分も育たないんだよねぇ」
とボヤいている。

しかし、我が家では真の理由を目撃していた。

種まきが終わった直後、近所のスズメが
「わーい!」
と集まり、土の中に頭を突っ込んで種を食べてしまうのである。

この町はどういう訳か庭に餌台を設置して鳥に餌をやる家が多い。

その数は確認できているだけで月曜から金曜の散歩コースを合わせると十数軒に登る。

我が家の周りにも餌台のある家はあるが、その一軒が裏のお宅だ。

そのお宅の裏庭には桜の木があるのだが、そこにいつも数十羽のスズメが遊びに来ている。

そのスズメたちが横目で種まきする妹ちゃんの姿を見ているので、きっと種を食べてしまう犯行グループだと思われるが、その事実を妹ちゃんは知らない。

去年から畑に種まきをするのをやめ、ガラス張りで温室状態となっている玄関先で苗まで育ててから畑に植えるようにしたので被害はなくなっているだろうが、スズメたちは餌にありつけないのでガッカリしていることだろう。

春を待つ人の楽しみも色々だろうが、我が家としてはもう少し暖かくなって桜の季節になるのが待ち遠しい。

例年通り、今年も桜の樹の下で昼ごはんを食べるのが今から楽しみだ。

そろそろ桜の便りも聞こえ始めたが、その便りが北海道に届くまで、まだ 1カ月くらいかかりそうである。