情報化時代

どんな情報でもネットで得られる時代になった。

高度な技術的内容、科学知識、学術的な内容から下世話なことまで手にはいらないことはないと言っても過言ではないだろう。

ロンドン・マラソン会場での爆弾テロ事件も使われた爆弾はネットで手に入れた情報を元に造られたし、ピストル、ライフルなどの銃器類の設計図だって手に入る。

さらに恐ろしいことに、最近になって普及し始めた 3Dプリンタと呼ばれる立体物を作ることのできる装置を利用し、銃器類の設計図を使えば誰でも製造することができるようになった。

以前は超高額だった 3Dプリンタも今では数十万円で入手可能となったので、本当に誰でも、組織ではなく個人でも容易に武器製造ができてしまう。

さらにネットでは銃刀法違反になる刃物も売っているし、薬事法、麻薬法に抵触する怪しげな薬品や植物も売られている。

もちろん、それらを手にすることは違法であるとか、危険性を説いた情報もたくさんあるが、好奇心から実際に購入して使ってみた感想もまた溢れるほど掲載されているのが現状だ。

パスポートを持たずとも、意識せずとも簡単に国境を飛び越えるネットの世界では、ポルノ規制はすでに用をなさないほどアダルト画像、動画が溢れており、無修正画像やら動画も簡単に見ることができる。

自分が子供の頃は、いくら好奇心満々でも入手できる情報など限られており、すでに経験済みの友だちやら先輩から耳の表面積を 30倍くらいに大きくして話しを聞いたり、原っぱになぜか落ちているエロ本を拾って見たり、どういうルートなのか定かではないが、普段は付き合いのない同級生も一丸となって協力し、教科書よりもヨレヨレになるほど使い込まれたエロ本が回ってきたりしたものだ。

そのような本や写真は屋根裏やらベッドマットの下にひそませておくのが定番だったが、どんなに巧妙に隠ぺいしてもなぜか親にバレるのが世の中の七不思議といえるだろう。

今では物理的ではなく、デジタルデータとしてパソコンのハードディスクに隠せば良く、使い方がよく解らない親に発見されるリスクは極めて少ないのだから子どもたちもやり放題に違いない。

その他にもネットには自殺の方法から集団自殺の誘い、犯罪組織の勧誘からカルト的宗教の勧誘まで、ありとあらゆる情報がある。

実社会においても犯罪への誘い、誘惑はあるが、ネットでは時間も場所も年齢をも問わず同一の情報に触れてしまうのが問題だ。

もちろん悪いことばかりでなく、食材の処理から調理法、植物や動物の育て方から宇宙の成り立ちまでどんなことでも調べられるし、一般的レベルの疑問であれば解決できないことはないというほどの情報量を備えている。

数年前の入試で問題になったように、たまにはネットを使ってデジタル・カンニングなどする輩もいたりするが、学問以外にも普段の生活における疑問に答えたり生活のヒントになる知恵袋的な情報も多い。

冠婚葬祭のマナーから一般常識、礼状や手紙を書くときに使える様々な文例集もあり、退職願の書き方から借金の催促状まで網羅しているし、嫌われない断り方から結婚式のスピーチや葬儀での親族代表あいさつの仕方まで何でも調べられる。

最近は静かになったが、国家機密や企業秘密まで入手可能なWikiLeaks(ウィキリークス)というサイトまであった。

冒頭に書いたように手にはいらない情報など皆無だろう。

しかし、そんなネットでも普通の手段では入手不可能なものがある。

それは個人情報だ。

これだけ情報が溢れ、拡散のスピードが高速化すれば逆に守らなければいけないものがあって当然で、個人情報はそれの最たるものである。

しかし、個人情報保護法によって神経質になり過ぎている面は否定できない。

今の時代、学校の生徒、父兄が繋がる唯一の方法だった連絡網など存在しないらしいし、年賀状を出す上で便利極まりなかった社員名簿なども存在しないらしい。

確かに紙で渡されても入力の手間がかかるのでデジタルデータで名簿がほしくなり、それを誤ってネットに公開してしまおうものなら数百単位のイタズラ電話、数千単位の迷惑メールが押し寄せてくること必至なので、そのリスクを回避するためにも最初から名簿化しないのが得策なのかもしれないが。

人間関係が希薄で隣人さえ信用ならず、外部の人に知られたくないということもあって今のマンション住人は郵便受けに名前も載せない。

隣に誰が住んでいるのかすら分からないことも珍しくないだろう。

まったく不思議な世の中になったものだ。

これだけ様々な情報が入手可能な時代に隣の住人の名前も分からないとは・・・。