マサルノコト scene 21

マサルは図体も大きく、ホンジャマカ石塚みたいな体型と、彼と同じような小さい目をしており、手だってグローブのように大きくてゴツイのだが、どういう訳かもの凄く手先が器用で、大きな体を丸めてチマチマとした細かい作業をするのがとても得意なのである。

ある日、我が家に遊びに来ていたマサルが粘土を見つけ、チマチマと何かを作り始めた。 自分は絵を描いたり造形物を作ったりするのが好きだったので絵の道具やら粘土やらは部屋のあちらこちらに置いてある。 それを見つけて何やら作り出したらしいのだが、そんなことは気にせずにノブアキと馬鹿な話をして笑っていた。 しばらくするとマサルは 「ほれ」 とできあがったものを机の上に置いた。

そこには体長 5cm くらいの躍動感あふれるゴモラの姿があった。 ご存知、ウルトラマンシリーズに登場する怪獣なのだが、それが精巧にできているのなんの、たった 5cm しかないのに今にも歩き出しそうな感じすらするリアルさであり、説明などされなくても、どこからどうみたって立派なゴモラでしかなく、それはそれは素晴らしい出来栄えだ。

ノブアキと二人で 「すげぇ~」 と褒め称えると、ただでさえ大きなマサルの体はますます膨らみ、胸が反り返って後ろに倒れそうな勢いで大威張りしていた。

そしてマサルは絵も上手く、美術の時間に描いたものの多くは貼り出されたりもしていた。 自分も絵を描くことは好きだったし、ある程度の自信もあったので同じように貼り出されることも多かったが、なにせまともに授業を受けなかったのでマサルのほうが成績も良かったに違いない。

マサルも自分も何も考えていなかったのに、美術の教師が市が主催する何かのコンクールみたいなやつに勝手に二人の絵を出品したことがあった。 そんなことは何も聞かされていなかったのに、ある日の全校集会で賞状の授与式が始まった。 何が何だか分からないまま話を聞いているとマサルが金賞を受賞したとかで体育館の壇上に呼ばれ、賑々しく賞状なんか受け取っている。

「すげ~」 と思う半面、絵には少なからず自信があったので悔しい思いもしていたのだが、実は授与式はまだ続き、金賞より上の 『何とか教育長賞』 という訳の分からない立派な賞が自分に与えられた。 それはとても嬉しいことだったが、人前で褒められたり賞状を受け取るのが照れくさい不良は不貞腐れた風を装い、笑いを必死にこらえながら壇上に立ったりしたものだった。

そんな自分やマサルとは異なり、ノブアキには絵のセンスや造形美術のセンスは 1ミリのカケラもなく、作り上げたもので大きな笑いを振りまいていた。 ある日の美術の授業は厚紙で型をつくり、そこに石膏を流し込んで固め、置物というか飾り物を作る内容だった。

そこでノブアキが作ったものは、何だか得体の知れないものだったのでマサルと二人、「それは何ぞ」 と尋ねると、ノブアキは胸を張って 「天馬だ!」 と答えた。 どこからどう見ても小学生が描く恐竜のような生き物で、長い首に太くて短い四本足、短い尻尾で背中に小さな羽まで生えている。 それが天馬だとぬかすのだから、マサルと呼吸困難になるほど笑い転げた。

時は流れて全員が大人になり、帰省した際に集まっては、毎度のように 『天馬』 を肴にノブアキをいじめながら酒を酌み交わしたものである。