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2006年 1月28日

真の恐怖 真の恐怖

  かなり以前の雑感で恐怖について書いたが、真の恐怖というものは心霊現象などに感じるだけではなく、もっと身近に存在する場合が多い。 例えば犬嫌いな人にとっては近くに犬が寄ってきただけで恐怖を感じるだろうし、大きな野犬数匹に囲まれでもしたら気絶してしまうに違いない。

  駅のホームで電車が入ってきたときに (もし後ろから突き落とされたら・・・) などと想像すると足元が寒くなってしまうし、エレベーターに乗っていて (もしワイヤーが切れたら・・・) などと想像すると一刻も早く降りたくなってくる。 また、たとえ男であっても夜道を歩いていて後ろからヒタヒタと足音が近づいてくるのは気持ちの良いものではない。

  数年前のことになるが、階下に暮らしていた夫婦には娘さんがいた。 当時は小学校の 5-6年生だったと思うが、確かに顔立ちの綺麗な女の子だった。 その母親と娘さんが外で立ち話をしているところに、ある新聞販売店の配達員が夕刊を届けにきた。 そして、至近距離で話をしている母と娘の間に強引に割って入り、ニタ〜っと笑って娘さんに 「可愛いね〜」 と言ったそうだ。

  そのことは奈良で発生した女児誘拐殺人事件で犯人が元新聞配達員だと分かったときにも思い出したのだが、彼が小児性愛者、いわゆるロリコンで犯罪者予備軍だった場合、自宅まで知られているということは恐怖に値する。 夕刊の配達どき、母親が買い物にでも行っていて娘さん一人が留守番をしていたらどうなることか。

  その後、その家族は仕事の都合で引っ越していったので心配はなくなったが、訳の分からない人間を配達員として雇用しないで頂きたいものである。 もし、万が一でも問題が発生したら販売店の店主にも責任の一端は発生することだろうから、採用には慎重を期していただきたい。

  もうひとつ恐かったのは過去に観たビデオである。 それはオカルト映画でも殺戮シーンの多い残虐な映画のビデオでもなく、小学校の教師をしていた友人から見せられた課外授業のビデオだ。 撮影したものを編集したいということで、ビデオデッキを二台所有していた自分のところにテープを持ってきたわけだ。 最初は興味もないのでぼんやりと画面を見ていたのだが、途中から目が離せなくなった。

  海岸か河原か忘れてしまったが、昼食作りのため子供たちが炊事を始めた。 その手つきたるや危なっかしいのなんの。 包丁を持って野菜の皮をむいたり切ったりするシーンになると恐くて正視していられない。 背中のあたりがゾクゾクし、尻がモゾモゾしてじっとしていられないくらいだ。

  力を入れすぎて一気に包丁が動き、野菜を持つ手のスレスレを通過するシーンなど 「うわぁ〜!」 と声が出てしまった。 そんな自分を見て友人は 「わっはっは」 と笑っている。 「恐くないのか」 と聞くと、「最初は恐かったけど慣れた」 と言う。 そして、「怪我をして経験を積まなくちゃいけない」 などと言う。

  それは正しい意見だと思うが、昔ならいざ知らず現代の親は我が子が包丁で手を切って帰って来ようものなら教師の監督不行き届きなどと騒ぎ出し、学校の責任まで問われるのではないだろうか。 その辺のところを聞いてみると、「確かに一部にはそういう親もいるけど自分で教えないから悪い」 と平然としている。 確かにその通りだと、少し友人のことを尊敬してしまった。

  約 3時間のビデオのうち、調理シーンは 1時間を占めており、それを観ている間はハラハラドキドキのし通しだった。 やっとカレーライスが出来上がり、子供たちがニコニコしながら食べているシーンにはある種の感動すら覚えてしまった。

  それは、もしかすると今まで観たどんな映画よりも恐く、感動的だったかもしれない。

2006 / 01 / 28 (土) ¦ 固定リンク

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