2003年 3月16日
恐怖 恐怖
体調が良くなかったのが主たる原因ではあるが、体調管理の意味も含めて先月の中旬に病院で検査を受けた。検査といっても人間ドックのような本格的なものではなく血液と尿検査のみだったが、結果は良好で異常なしとの診断を受けた。それでも体調は万全ではないので他に何か原因があるのかもしれない。
体調のことはさておき、いつも病院で思うのは 「注射がなければ・・・」 ということだ。注射が好きだという人の話を聞いたことはないが、自分も注射は大嫌いなのである。子供ではないので痛いのくらいは平気なのだが、自分の体に針が刺さっているのを見ると頭がクラクラしてしまう。おまけに採血で注射器に血が入っていくのを見ると気絶しそうになる。
身近に感じる、リアルなものほど恐怖を覚えてしまうものである。映画などでは腕がもげようと、頭が爆発しようと平気で見ていられる。そこには恐怖よりも ”作り物の美学” が存在するからであり、恐さよりも 「よくできてるな〜」 と感心すらしてしまうことが多い。公開当時 「ちょっとやりすぎ」 と言われた映画 『遊星からの物体X』 も画面の中で腹が割れようと首がとれようと何も恐くなかった。
ところがである。ニュース番組で予防接種などを伝えるときに出てくる注射シーンは正視することができない。たまたま見てしまった場合は体の力が抜けてフニャフニャになってしまう。自分にとって、頭が爆発したり腹が割れるのは現実的ではないので平気なのだが、注射などは明日にでも我が身にふりかかりそうなリアルなことであるため、恐怖を感じてしまうのだと思う。
注射の他に恐いものといえば 『雷』 が苦手だ。小さい頃、近所の木に落雷し、その木が折れるのを目撃したことがあるため、どうしようもなく恐い。雷が鳴り出すと、それが収まるまでじっと動かずに目だけキョロキョロさせている。たとえ家の中にいても雷が鳴っている間はおとなしくしているのである。
心臓が強い方ではないので、ドバー!っと出てこられるのも苦手だ。恐怖映画でも日本式にドロドロと幽霊が出てくるものは平気だが、『エイリアン』 みたいに急に現れるものを見ると床から尻が 3cm ほど浮いてしまう。そのあとしばらくは 「ハァハァ」 と呼吸も荒く、立ち直るまで時間がかかる。だからお化け屋敷も恐くて入れない。お化けが恐いのではなく、驚かされるのが苦手なのである。
学生の頃、友人がお化け屋敷でアルバイトしていた。何人かで出向いて入ってみたのだが、驚かされてはたまらないので 「俺だー!驚かせたら殺すゾー!」 と脅しながら進んだ。結局、驚かされずに済んだのだが、一緒に入った友人からは 「おまえと一緒だとつまらん」 と嫌われてしまったのであった。
世の中には様々な恐怖があるが、心理的に真の恐怖を感じたことがある。何年も前に住んでいたマンションは上の階の住人がとてもうるさかった。それなりの立派なマンションだったが、子供がいるのか 「ドッカ〜ン」 と高いところから飛び降りたような音や、「ドドドドッ」 と走り回るような音が聞こえる。あまりにもうるさいので文句でも言ってやろうかと考えていたある日、いつもより激しい音がする。
おまけに時間は夜中の 1時を過ぎているので 「もう許せん!」 と立ち上がったところ、換気口を通して上の声が聞こえる。大声で怒鳴る男性の声と、「たすけてー!殺されるー!」 という女性の悲鳴だった。警察に連絡すべきか迷っているうちに物音と声が聞こえなくなった。派手な夫婦喧嘩だったのだろうか?それとも事件なのだろうか?と、考えただけでも恐かった。
それよりも恐かったのは、その日から 2-3日の間あれだけうるさかった上階から物音ひとつ聞こえてこなかったことである。「まさか悲鳴の主である女性が本当に殺されているのでは?」 と考えると本当に恐かった。その間は女性が実家にでも帰っていたのか、しばらくするとうるさい物音が復活したので変な意味で胸をなでおろしたのだが、人を恐れさせるような喧嘩はやめていただきたいものである。
その住人には心理的な恐怖を覚えさせられたのと同時に、心の底から腹を立てたのであった。
2003 / 03 / 16 (日) ¦ 固定リンク