2005年 8月13日
犬や猫のいる風景 2005年真夏の二歩 犬や猫のいる風景 2005年真夏の二歩
タイトルに 『真夏』 の二文字を使ったが暦の上では秋である。 秋ではあるが、まだまだ暑い日が続いており、散歩中に出会う犬達も少し元気がない。 いつもはグイグイと飼主を引っ張っている犬も舌をベロ〜ンと出してトボトボ歩いているように見える。 暑さに参っている訳ではないが、つい最近、切なくなるような犬の声を聞いてしまった。
近所に住むおばあちゃんの家には、近くに暮らしている娘さんが毎日のように犬をつれてやってくる。その犬はおばあちゃんからおやつを貰うのだが、食べる前に必ず一声 「ワン!」 と鳴く。 おばあちゃんに 「ワンは?」 と言われて良いお返事をするのが約束だ。 窓を開けていると、いつも同じような時間に 「ワン!」 と聞こえるので 「あ〜今日も遊びにきているんだな」 と思ったりしている。
先月の中旬、そのおばあちゃんが体調を崩して入院してしまった。 それを知らずに犬はトコトコと散歩にやって来た。 いつも立ち寄る家の前を飼主さんが通り過ぎようとするので、いつもは吠えることのない犬が 「ワンワン」 と文句を言い、おばあちゃんの家に入ろうとする。 根負けした飼主さんが玄関の前まで犬を連れて行ったが、ドアは閉ざされたまま開くことはない。
最初は 「ワンワン」 とおばあちゃんを呼んでいた犬だが、誰も出てこないのと家から人の気配が感じられないことに気づき、「ウォォ〜ン、ワォオ〜ン」 と ”歌う犬” を思わせる苦しげな声で鳴き始めた。 いくら呼んでもおばあちゃんは家の中にいない。 あまり長く鳴き続けるものだから声もかすれてしまい、この世の終わりと言わんばかりの悲しい鳴き声に変わってくる。
そこの声は鳴き声というより泣き声と表現すべき悲しく切ない声で、聞いているこちらまで悲しくなってしまった。 窓からおばあちゃんの住む家を見ると、飼主さんに引かれながらも首をおばあちゃんの家に向けたまま寂しそうに立ち去っていく犬の姿が見えた。
数日後、おばあちゃんが元気になって退院してきた。 少しやせてしまったような気もするが顔色も良く、元気に歩いている姿も見かけたので体調も回復されたようだ。 そして、おばあちゃんが退院してきた翌日、我家の窓から 「ワン!」 という良いお返事が響いてきたのだった。
2005 / 08 / 13 (土) ¦ 固定リンク