2004年10月09日
嗜好の多様化 2 嗜好の多様化 2
各レコード会社が CCCD (Copy Control CD : コピー制限 CD) を採用していたが、ソニーはそれを全廃し、先陣を切っていたエイベックスも 「アーティストや作家、ディレクターなどの意向を尊重する」 と表明して CCCD は短い使命を終えようとしている。
CD の音楽を PC に取り込み、CD-R (書き込み可能な CD) へ複製したり、音楽データそのものをインターネットで無断で配信したりする行為を防止するために導入されたのだが、この技術は評判が悪すぎた。 音にこだわる人に言わせると、明らかに音質が低下 (劣化?) しているらしい。 CCCD は、本来の CD の規格から外れているため、再生する機器よっては音飛びがおこったり機器を故障させたりしている。 PC では CD を挿入しただけで勝手にプログラムをインストールする。
ユーザの承認もなく訳の分からないプログラムを PC に入れたり、機器を故障させるなど、まるでウィルスではないか。 CD の売り上げが減少しているのは不正コピーが主因として講じた対策だったが、かえってユーザ離れを引き起こし、売り上げの減少に歯止めがかからなかったという説もある。
各レコード会社は CCCD を廃止する理由として 「著作権侵害に対するユーザの認識が高まり、一定の成果が上がったため」 と説明しているが、とてもそうは思えない。 事実、CCCD でも複製できるプログラムは存在するし、著作権の侵害は今でも行われている。 ここは素直に 「評判が悪かったから」 と認めた方が良いのではないか。
iPod を代表とするような、PC を経由して音源を取り込んで楽しむ新型携帯音楽プレーヤーが急速に普及し、大きな市場を形成しつつある。 そんな時代に PC に取り込めない技術を採用した業界は時代に逆行したと言わざるを得ないのではないだろうか。 新市場を無視できなくなったことと、評判が悪かったことが CCCD を廃止する大きな理由であろう。
第一、売り上げ減少の原因が不正コピーであると本気で思っているのだろうか。 もしそうであれば嘆かわしい限りである。 今でも本当に良い作品は 300万枚も 400万枚も売れている。 売り上げが減少しているのは魅力のある作品が少なくなったことに他ならないと思う。
ある曲がヒットすると、それと似たような曲が次々に発売される。 ブラック・ミュージックが売れればそればかり、ヒップホップが売れたらそればかり、以前の雑感にも書いたが、『イエモン』 や 『奥田民生』、『スピッツ』、『JUDY AND MARY』 などのコピーバンドみたいなものまで CD として発売される。 ドジョウが何匹もいるわけがなかろう。
インディーズと呼ばれるマイナーなレコード会社では個性の強い元気な作品を提供していたアーティストもメジャー・デビューしたとたんに歩行者天国の BGM のような皿(CD)になってしまう。 万人が好む音楽など存在するはずがないのに万人受けしようとするから画一的な、つまらない作品になってしまう。 嗜好が多様化し、情報が溢れている時代なのだから自分好みの音楽を見つけて楽しむ人も多い。
それであれば、画一的な曲ばかりを発売するのを止め、様々な分野の個性溢れる作品を供給すべきであろう。 大量生産、大量消費してもらわなければコストがかさむのは分かる。 しかしそれは、どの産業も同じである。 現在は大量に物が売れる時代ではないので、どの産業も低コストで少量生産できるように努力している。 レコード業界だけがこのままで良いはずがない。
業界全体が消費者に迷惑をかけ、消費者を振り回した責任をとるためにも、CCCD の成果を正確に検証して公表し、今後はより良い作品を供給していただきたいものである。
2004 / 10 / 09 (土) ¦ 固定リンク