なまけ者 1

自慢ではないが、自分は相当ななまけ者だったりする。

相手のいることであれば、それなりの責任感もあるし達成するための努力はするが、自分にはとことん甘いので辛いこともしなければ努力もしない。

たとえば仕事であれば夜遅くまで作業することも苦にならないし、お客さんの要求を満たすために努力するのは当然だ。

しかし、中年を過ぎてどんどん膨らむ一方の腹を引っこめようとか、増加した体重を減らすためのダイエットをする気などさらさらない。

食べたいのを我慢するとか、嫌々ながら運動するとか、そういったものには一切の興味がなく、ウザいCMと週刊新潮への厳重抗議で何かと話題の結果をコミットするライザップ(RIZAP)なども興味の対象外である。

最初にあのCMを見た時から、あれはライザップ側が提示した運動、食事制限などをすべてクリアできたら理想の体型になることをコミット(約束)するのであって、単に痩せることをコミットするのではないと思っていたし、2カ月であんなに体型が変わるにはどれほど辛い運動をし、どれだけ腹をすかせなければならないのだろうかと思っていた。

とにかく好きなことにしか興味がなく、辛いのが嫌な自分であるため、生まれたのが昭和で良かったと心から思っている。

それがなぜかと言えば、今の時代に生まれてきたなら超ダメ人間になる120%の自信があるからだ。

子供の頃に携帯ゲーム機があれば、勉強などそっちのけで遊びに没頭すること間違いなしだと思われるし、中学生にもなれば何だかんだと親を説得したり脅したりしてスマホを手に入れ、通話無料アプリのLINE(ライン)などで悪友と連絡し合い、音楽を聴きまくり、動画を見まくっていると思われ、勉強に必要だと強引にパソコンを買わせ、アダルトなサイトを見まくっているに違いない。

そして、だんだん部屋から出ることがなくなって引きこもり、学校にも行かず友だちの数も減って、ますますネットの世界を徘徊し、学校の勉強どころか人と関わって形成される社会性や協調性なども身につかず、精神が崩壊するところまで行ってしまうに違いないと自信を持って言える。

自分のことは自分でよく分かっているつもりだ。

楽な方へ、楽な方へと進み、興味のあること、楽しいと思えることしかしないという性格の持ち主であれば、面白くもない授業など受けるより、面倒な計算をしたり暗記をしたりするより、つらい思いをして受験勉強するよりパソコンやスマホをいじって遊んでいる方が良い。

そして、そこから抜け出す勇気もなければ、苦しく面倒な生活に戻る意志もなく、いつまでも延々と自堕落な生活を続け、引きこもりのニートとなって親を困らせ、生活態度を注意されようものなら逆ギレして暴れるという落伍者になっていただろうと容易に想像できる。

つまり、自分のようななまけ者は今の時代に生まれなくて良かったのだ。

古い時代に生まれたからこそ、友だちと話すにしても電話機は家に一台しかなく、それがリビングにあるものだから危ない話しなどできないし、長電話すれば親に叱られる。

テレビだって今のように24時間やっている訳ではなく、深夜になればほとんどの局が放送を終了するし、深夜ラジオを聴いていても部屋を暗くして目を閉じていれば眠くなる。

ヒマな時間はレコードを聴いているか、マンガを読んでいるくらいなもので、それだって同じマンガを何度も読んでいると飽きてしまい、とうとうやることがなくなって仕方がないから勉強でもするかという気になった。

ところが今の時代はテレビ局も24時間休まず、無料ゲームはダウンロードし放題、音楽も低額で聴き放題、ネットの世界をのぞけば青少年が興味津々のエロ画像や動画であふれ、掲示板やSNSで悪態をつくなど楽しく、そして忙しすぎて勉強などするヒマがない。

そんな世界にどっぷりと浸かる姿が見えるからこそ、今の時代に生まれてこなくて本当に良かったと、なまけ者を自覚している自分は胸をなでおろしたりしているのである。