2011年1月14日金曜日、数日前から北海道上空に居座る寒気の影響で底冷えするほど気温は低く、雲の流れも早くて太陽が見え隠れしており、ただでさえ楽しくはない場所に向かう足取りも重たい。
その日は年に一度の健康診断を受ける日。
本来であれば昨年末、2010年の11月に受診するつもりだったのだが、申し込みをするタイミングが遅かったことと、胃カメラの空きを待たねばならなかったので今年までずれ込んでしまった。
そう、気が重くなる最大の原因はこの胃カメラであり、前回は口からの挿入で地獄の苦しみを味わったので今回は鼻からの挿入を希望していたものの、恐怖がぬぐい去られた訳では決してなく、むしろ新たなことに挑まねばならぬ不安でいっぱいだ。
それでも鼻からの胃カメラは口からのものと比較してずいぶん楽であり、医師と一緒に映し出される画面を見ながら余裕で会話までできると聞いていたので 2009年の不安よりは少し軽い。
しかし、楽しい事ならいざしらず、嫌なことをされに行くことに変りはないので必然的に足は重くなってしまうのである。
採便した容器の提出と受付を済ませ、検尿用の紙コップを渡されてロッカールームに向かい、着替えながら考えていた。
今は紙コップが多く流通しているが、昔の検尿はどうやっていたのか、ビーカーのようなガラス製の器を使い回していたのか、そう言えば検便も現在はキット化されているが、昔はマッチ箱に入れて持参したと聞いたことがあるが、あれは本当の話なのだろうか。
トイレで採尿も済ませて待合室に行くと、順番待ちしている人の 80%くらいが女性だったので少し驚く。
その女性たちがグループ化しているので職場の人が団体で受診に来たのかも知れないなどと考えていたが、男性の中に白衣を着た人が何人かおり、会話を聴いているとこの病院の医師や看護師らしく、今日は院内の健康診断の日でもあるらしいことが分かった。
最初は胸のレントゲンだったが、それは機械に胸をつけるときにちょっと冷たかったくらいなもので何事もなくクリア。
次は問題の採血である。
この病院の、とくに 2階にある処置室の看護師さんたちとは相性が悪いらしく、血管注射をすると高い確率で腕が紫色になってズキズキ痛む。
ところが今回の人は普段は見かけない人だったので一階の人なのかも知れないが、針の挿入時にも強い痛みは感じず、終わってからも、そして今も腕の色は変わっていないので相性の善し悪しというのは本当にあるのだろう。
次に心電図だが、これも吸盤が異様に冷たかった程度で問題なし。
・・・ちなみに、ここでの 『クリア』 や 『問題なし』 は無事に終わったという程度であり、さらには主観であるため検査結果がどうだったかは約一カ月後にならなければ分からない。
次は身長、体重の測定だが、検査装置に乗ったときの姿勢が悪かったようで、看護師さんが
「あれ?縮んでますね」
と首をひねりながら
「アゴを引いてもう一度乗ってください」
と言うのでやり直してみたところ、
「ああ、やっぱり、去年と同じ身長ですね」
と納得していた。
次は視力検査だが、今回はメガネをして初の検査である。
2009年の検査で視力の悪化に愕然とし、それを機にメガネを買うことになったことを思い出しているところにガーゼを手渡され、それが何を意味するのか分からずボ~っとしていると、
「それで左目のレンズを押さえてください」
と指示された。
黒色のオタマみたいな物はメガネをしてない人が使うもので、メガネをしている人はガーゼでレンズを押さえて検査するということを初めて知った。
メガネを使い始めてから約一年、視力の衰えが進んでいるような気がしたが、1.0以上はあったようなので問題はなさそうだ。
次には腹囲測定と聴力検査。
腹囲はメタボにギリギリ状態で、これ以上は太らないようにと宣告されてしまった。
聴力に関しては電子音が聞こえるには聞こえたが、結果がどうなのか分からない。
そして、いよいよ胃カメラの番である。
健康診断を受ける場所に胃カメラの装置はないので院内を移動して検査を受けに行かなければならないが、前述したように看護師さんたちも検査を受けていたので近くにいた人に案内の人が
「あ、◯◯さん、この方をお願いね」
と引き渡され、検査着姿の看護師さんに連れられて場所を移動した。
途中、気を使ってくれて
「診断は毎年受けられているんですか?」
と話しかけてくれたが、これからのことを考えると気もそぞろで
「はぁ・・・」
などと覇気のない返事をしながらトボトボと歩く。
少しずつ、そして確実に検査室は近づいてくる。
逃げるなら今しかないが、同行している看護師さんはドーンとしていて体力では勝てそうにない。
そして、ついに検査室の扉が開き、いよいよ中へと足を踏み出す。
・・・が、長くなってきたので次回に続く。