我が町の交通事情

車の運転手がもの凄く親切で照れる。

信号で横断歩道を渡ろうとしたとき、左折車だったらまだしも、右折の場合は対向車の進路をふさぐことになってしまうことがあるので車を先に通してあげようと立ち止まっているのだが、それでも車は停止して歩行者を優先させようとするため、さっさと通り過ぎてしまわないと逆に迷惑をかけてしまう事態になることがあり、大阪とはあまりにも異なる交通事情に戸惑いすら覚えてしまうことがある。

信号のない路地の交差点でもそれは変わらない。

道路を渡ろうとして車が来ている場合、車が通り過ぎるのを待つのが大阪では当然だったし、それが正しいとか間違っているとか、常識だとか非常識だと考える前にごくごく当たり前のこととして何も考えずに立ち止まっていたのだが、こちらでは 100%近い確率で車が停止し、歩行者を優先させてくれる。

道には優先順位というものがあり、交差点にも必ず一旦停止しなければならない道はある。

そちらの車が停まってくれるのならある程度は理解もできるし、堂々と道を渡ることができるのだが、優先順位の高いほうの車までが停まってくれるものだから何となく申し訳ない気分になってペコペコしながら道を渡ることになってしまう。

極めつけは道路の横断だ。

信号などなく、ましてや交差点でもなく、横断歩道があるわけでもない道の途中、反対側に渡ろうと来ている車が通り過ぎるのを待っていると、車のほうが停まって道路を横断させてくれる。

いやいやいや。

ここは田舎町。

交通量が多いわけではない。

左右確認しても視界にある車は一台だけだ。

したがって、その車さえ通り過ぎれば何も気にせずゆっくりと道を渡ることができる。

だからわざわざ停まってくれる必要などなく、ビュンと通り過ぎてくれれば良い。

ところが車は目の前に近づくとピタリと停まり、じーっとこちらが横切るのを待っている。

こちらとしては、慌てるやら恐縮してしまうやらで、ものすごい勢いでペコペコしながら道路を横断する羽目になるのだ。

こちらに引っ越してから、常にペコペコと恐縮しながら道を歩いているような気がしないでもない。

それというのも運転手が親切すぎて、大阪のように歩行者に対してスパルタな環境で 16年も鍛えたれた我が身にとっては馴染めなかったり慣れなかったり戸惑ったりで、もの凄く照れくさかったり恐縮してしまったりする。

最近では車の通行の邪魔をしないように、ちょっとコソコソしながら交差点を通過したり、道を渡ったりしている自分たちなのである。