文化

訪日外国人客数が右肩上がりに延び続けている。

日本には世界に誇れるような絶景など数知れているので、来日する外国人の興味は日本文化にあるのだろう。

そして、今でも少なからず日本らしい文化というか風景が残っているのは京都くらいなものなので、観光地として圧倒的な人気があるのもうなずける。

風情のある建物に舞妓さんの着物姿、京料理に神社仏閣とそろえば日本文化を堪能するのに十分だろう。

着物など海外の人から見たら独特な衣装であり、珍しいのだろうが同じ日本人でも着物を着る人は珍しくなった。

そもそも、どうして必死になって覚えなければ自分で着られないような衣類が文化として根付いたのだろう。

どこの国だって大昔の移動手段は馬を代表とする動物によるものが定番だ。

ラクダに乗るにしても馬に乗るにしても、背中にまたがるのだから両足が開く方が都合が良い。

だとすれば必然的に衣類も股を開きやすいズボン的なものになって当然だと思うのだが、日本の場合は男女とも両足の動きが制限される着物になったのが不思議でならない。

そして、どこの国の人がどう見たってヘンテコなチョンマゲ文化はどうして日本に根づいていたのか。

世界的に見ても全員が同じヘアスタイルをしている国など類を見ないと思われる。

男はチョンマゲ、女は日本髪。

よほど髪が薄くなって髪が結えなくなる以外、例外なく同じなのだから驚いてしまう。

それは着物を着るのが大変なのと同様で、自分一人では髪を整えるのが極めて困難だ。

ちょっとした乱れを整えるくらいはできるだろうが、最初から自分の髪を一人でチョンマゲにしたり日本髪に結い上げることなどできないのではないだろうか。

なぜそんな面倒な髪型になり、なぜそれが面倒すぎるからと単なるロングヘアや短髪にする人がいなかったのかが解せない。

没個性、右へならえ精神は、それよりも遥か昔の太古の時代から脈々と流れる日本人の DNAなのか。

日本の食文化で生魚を食べるのは島国で海産資源が豊富なのだから理解できる。

むしろそれが自然だったのだろうが、他国から見ると火を通さずに食べるなど異様だったことだろう。

釣り上げた魚を単にさばいて食べるだけという簡単な調理法もあるが、一手間、二手間、いや、いったいどれだけの工程があるのか分からないほど複雑な製法で作り出されるものもあるのだから日本の食文化は奥が深い。

グツグツ煮ればできるソースやケチャップとは異なり、何か月もかけてやっとできる醤油や味噌、かつお節などの深い味わいは日本独特のものであり、甘味、苦味、酸味、塩味に加えて第5の味覚と世界が認めた『旨味』は日本発のものである。

日本人として誇れるものは多くはないが、その食文化、『和食』は誇っても良いのではないだろうか。

うどんや蕎麦は、水が豊富だからこそ生まれた食文化だろう。

水がとても貴重で、何キロも歩いて水源から運んでくるような土地では、一滴たりとも水を無駄にできない。

そのような環境で暮らす人が麺を打つ際にも水を必要とし、茹でる際にも大量の水を使い、茹で上がった麺を流水でじゃぶじゃぶ洗い、たっぷりのだし汁で食べる料理など作れないどころか、発想することすらできないだろう。

その土地だからこそ可能なことがあり、その土地だからこそ生まれる文化はある。

ただし、冒頭に書いたように着物と日本髪がなぜ生まれたのかに関しては、やはり納得できないが・・・。