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マサルノコト scene 19マサルノコト scene 19

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突然ではあるが、マサルは目が細い。 体型はコロコロしている。 お笑いコンビ 『ホンジャマカ』 の石塚英彦、最近では 「まいう~」 でおなじみの彼を想像すると分かりやすい。 キャラ的に似ていることをマサル本人も嫌がってはいないようで、数年前まで届いていた年賀状にはホンジャマカ石塚の顔がプリントされたりしていたものである。

そのマサルの細い目が、常人と比較してどこまで視野が狭いのか気になって計測したことがある。 それはよくある測定方法で、ある一点を見つめたまま、上下左右どこまでの範囲で他の物体を捕捉できるかというものだ。

まずは左右を試してみたが、180度を越えるところまで見えているようなので一般人と変わりはない。 目が細いといっても小さい訳ではなく、横幅は差がないので見えて当然か。 次に上下を計測してみたところ、明らかに常人より視野が狭い。 普通であれば下はアゴのあたりから上は眉毛のあたりまで見えるはずなのに、その範囲が異常に狭いのである。

そんなマサルを馬鹿にして笑い転げていたが、大人だったマサルは 「うるせー」 などとは言うものの、本気になって怒るわけでもなく、一緒になって笑ったりしていた。 ずいぶんと長い付き合いになるが、今まで一度も喧嘩をしたことがないのはマサルが大人で、自分が勝手なことやワガママなことをしても我慢したり許してくれていたからだろう。

scene 13 に書いたように風紀委員長をしていたマサルは鬼の検査官でもあった。 今の中学校の校則がどのようなものか分からないが、同時は人権蹂躙もはなはだしく、服装から髪型まで事細かに規定されており、規定以上に髪を伸ばそうものならハサミを手に生徒を追いかけ回すような、現在であれば大問題に発展しそうな教師までいたくらいだ。

抜き打ちで持ち物検査をしたり、髪形の検査などもあったが、そんな時に率先して働かなければならないのもマサルの仕事だ。 当時、校則なんかくそ喰らえで髪を伸ばし、良からぬ物を隠し持っていた自分だが、カバンの中からコソコソと見つかってはならぬ物を制服のポケットに忍ばせ、伸びた横髪を耳にかけ、後ろ髪を制服の襟の中に隠して斜め上を見ながら嵐が去るのをじっと待っていた。

誰がどう見ても怪しい雰囲気をプンプンに振りまきながら息を潜めているのだが、髪の長さを計る定規を手にしたマサルは自分のところだけは適当に検査しながら、小声で 「おまえ、ええかんにせーよ」 と言って立ち去っていく。 当然、他の生徒たちからは 「きったねー」 とか 「ずるーい」 などと罵声を浴びせられるが、「うるせー」 などと言って毎回のように見逃してもらっていた。

教師もそれに気づいてはいるものの、「しょうがないなー」 とでも言いたげに苦笑いしながら見てみぬふりをしていてくれる。 もちろん、本格的に悪いことをすると教師に呼び出されて何時間も説教をされたし、時には思いっきり殴られもしたが、少々のことには目をつぶって見逃してくれる度量があり、「あなたのクラスの、あの生徒は・・・」 などと他の教師から言われても意に介さずにいてくれた。

勝手気まま、自由な中学校生活を送れたのは、マサルも含めた周りの大人たちの度量と、優しさによって守られていたからであると今になって思う。

マサルノコト