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限度限度

イスラム過激派のテロで 17人の犠牲者を出したフランスでの事件は、今日になって犯人の射殺という結末で終わった。

物事には限度というものがある。

テロなどの暴力で解決するはずもなく、それは決して許されることではないが、フランスの風刺週刊紙シャルリエブドが掲載したイスラム教預言者ムハンマドの風刺画も限度を超えていたのではないだろうか。

確かに表現の自由は守る価値のある権利ではあるが、そもそも自由というのは何をやっても許されるものではなく、自由であればあるほど一定の配慮や自制が必要になると考える。

自由だからといって人を殺したり傷つけたりしてはいけないし、それは体への物理的な傷だけではなく心や精神への論理的な傷も同じことだ。

イスラム教徒にとってムハンマドはイスラム教の開祖、つまりムハンマドによってイスラム教が始まったのだから神に最も近い人物、ともすれば神そのものである訳だから、それを笑い者にすることを一部の信者は許せなかったのだろう。

テロ行為にはおよばないまでも、キリスト教徒はイエスが笑い者にされたら喜ばしく思わないと思われ、仏教徒であれ神徒であれ大差はなく、仏様や神様を馬鹿にされたら良い気はしないだろうし、「このバチあたりがっ!」 とムキになって怒る人もいるに違いない。

本気で怒る人や傷つく人がいると分かっていながら風刺画を掲載するのは、表現の自由を通り越して無神経であってデリカシーに欠けると思うし、限度を越えた行為だと思う。

だからと言ってテロ行為に走るのは、そちらもまた限度を越えているが。

類似したこととしてソニー・ピクチャーズ制作の北朝鮮をジョークの対象とした映画 『ザ・インタビュー(The Interview)』 の一件がある。

それは北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の暗殺を題材とした映画で、ネタバレになってしまうが金正恩の暗殺が成功し、北朝鮮が民主化されるという内容だ。

北朝鮮国民にとって金正恩は神に近い存在であるため、アメリカのオバマ大統領や日本の安倍首相の暗殺などという次元を越えており、日本においては終戦以前の天皇、16世紀から17世紀のヨーロッパにおける絶対王政時の国王の暗殺を描いたようなもので許容範囲を越えているものと思われる。

いくら表現の自由があろうと相手の感情を考慮した場合、いくらなんでも実名を挙げて笑い者にしたり殺したりするのは限度を越えているのではないかと思えてしまう。

だれでも容易に想像がつくにせよ、国名や個人名を架空のものにするなどの配慮があっても良さそうなものだと思うし、暗殺が成功するのではなく最高指導者が改心して民主化が実現するという終わりではいけなかったのか。

本気で怒る人や悲しみを覚える人がいると分かっていながらパロってしまうのは、やはり表現の自由を通り越した無神経でデリカシーに欠ける限度を越えた行為だと思える。

だからと言ってサイバーテロという行為に及ぶのも限度を越えているが。

そしてマクドナルドだ。

昔は食べ物に異物が混入するなど日常茶飯事のことだったが、現代人は超衛生的、超最高品質という超過保護な生活に慣れ親しんでいるため、少しのミスも許してくれない。

バリバリ昭和生まれのオッサンは、買ってきた食べ物に髪の毛の 1本や 2本が入っていようと取り除いて食べてしまうだろうし、気持ちの良いものではないと思いつつも購入店や製造元にまで文句をいうつもりはないし、それを撮影してネットで公開しようとも思わないだろう。

したがって、ビニール片やプラスチック片が出てきたくらいで大騒ぎするのは限度を越えていると思っていたのだが、怪我をする危険性が高いガラス片が出てきたり、歯が出てきたりと全国津々浦々のマクドナルドで異物混入が相次ぐ事態に直面しては、やはりマクドナルド側に限度を越えた品質低下と組織の硬直化があるのだろうと思える。

バリバリ昭和生まれのオッサンも、肉の中から歯が出てくれば食欲が失せるのを通り越して胃の内容物を吐き出してしまうだろうし、二度とマクドナルドには行きたくなくなるに違いない。

時代の寵児ともてはやされた原田社長だったが、在任当時からその手腕や組織運営法には疑問をいだいており、『お買い物日記』 担当者と二人で何かが気に入らない、彼のやり方の何かがおかしいと話していたが、やはりと言うべきかコンピュータ業界そのままの経営手法が飲食業、接客業に通用せず、限度を越えたコストカットや効率化は品質低下と店員への過剰負担を招き、トップダウン型の指揮系統は現場の声を上層部に届きにくくさせてしまったようだ。

苦境から経営を V字回復させたという賛辞を受け、名経営者としてベネッセに移った原田氏だが、マクドナルドに残した負の遺産はあまりにも大きすぎる。

今、ネット上ではマクドナルドがガラガラに空きすぎているとか、人いなさすぎなどという書き込みが目立つが、昨年の鶏肉問題の傷も癒えぬまま新たな大怪我を負ってしまった組織が復活するのはいつのことになるだろう。

原田氏はコストカットの一環としてマクドナルドの直営店を減らし、30%だったフランチャイズ店を 60%までにしたが、この苦境を一緒に乗り切ってくれるオーナーはどれだけいるのか。

それらすべてのことが原田改革のマイナス面として表面化しているような気がする。

しかし、それにしてもである。

今回の件に関するマスコミの騒ぎ方も限度を越えているような気がするが・・・。