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虚偽表示虚偽表示

老舗百貨店、高級ホテルやレストランなど様々な業界で虚偽表示が発覚して社会問題化しているが、これは今に始まったことなのだろうか。

そもそも世間を騒がせている虚偽表示問題の発端は 5月頃に発覚したディズニーの偽装であり、この事件を受けて各ホテルが内部調査を行った結果、虚偽表示があったことが判明した阪急阪神ホテルズは事実の公表に踏み切った。

それ以降は内部告発で発覚する案件も多いが、どさくさに紛れて今のうちに公表してしまえば集中砲火を避けられるという 『赤信号みんなで渡れば怖くない』 的なノリで発表している企業も少なくないものと思われる。

ウィキペディアにまとめられた内容では一連の流れは 2008年から始まっているようだし、その前の 2005年には 「食べてはいけない」 の基礎知識―食の危機・偽装表示を見抜くという本も出版されているので古くからある事例が一気に噴出しているというのが現状なのかも知れない。

高級だと思っていたものが産地偽装品で実は単価の安い食材を使用しており、原価に見合わない価格を提示されていたというのも腹立たしいが、牛の霜降り肉が実は牛脂注入肉だったという一件は健康被害を引き起こす可能性が高かったこともあって問題が大きい。

というのも、注入される牛脂は小麦、卵、乳を含む場合が多く、それらは食物アレルギー物質であり、過剰反応する人にとっては命に関わることも少なくないので虚偽の表示でしたでは済まないのではないだろうか。

アレルギー反応が出た人も、よもや高い金を払った肉に問題があったなどとは考えもぜず、きっと他の料理と同じ調理油を使用していたのではないかと考えたり、別の食べ物に含まれていたと思っていたに違いない。

企業倫理やモラルの問題ではなく、詐欺罪として刑事告発されたり、アレルギーを引き起こされ、それによって体調を崩したなどと業務上過失障害とか、強いアレルギーで死に至ったとして業務上過失致死傷罪に問われでもしたらどうするつもりなのか。

ホテルやレストランは食材を厳格な基準で調達していないと世界に広く知れ渡れば、宗教上の理由から食べ物を制限し、イスラム法上合法な食品のみをハラル食品としている人々は日本への観光を控えることになるだろうし、信用が失墜すれば他の国の人、他の宗教の人だって観光に二の足を踏むことだろう。

消費者の信頼を裏切ったことがどれだけのダメージとなるか思い知るが良い。

産地偽装もさることながら、その鮮度や美味しさを強調するために付けられるキャッチコピーもよくよく考えてみれば怪しいものが多くある。

スーパーで売られている 『朝採り野菜』 だって本当に今朝なのか分かったものではなく、昨日だって一昨日だって朝に収穫していれば 『朝採り』 ということになるのではないだろうか。

飲食店で 『朝採り野菜のサラダ』 などと表記してあっても、本当に毎日、朝採れたものが確実に入荷しているのか怪しいような気がする。

同じように居酒屋チェーンなどで 『朝取りイカのお造り』 などと表記されたものがあるが、自然を相手にした漁で確実に船を出して間違いなく必要な量の魚が水揚げされる保証などない。

近年、日本では観測史上最高の暴風とか大雨を観測することも珍しくなくなったが、そんな日でも居酒屋に行けば、そんなはずはないのに朝取りの新鮮野菜でサラダを作ってくれ、朝取りのイカをさばいて刺し身にして提供してくれることだろう。

通販サイトを覗いてみても、『朝どれ浜ゆで越前ずわい蟹』 とか 『浜ゆで毛ガニ』 などという文言が目につくが、『朝どれ』 であっても茹でたものが数日後に宅配されるのであれば意味はないし、『浜ゆで』 というのも実に怪しい。

漁師のおっさんやその妻が、寒い中で火をおこし、ドラム缶でグツグツ蟹を茹でている光景が目に浮かぶが、そんなことをしているはずはなく、陸揚げされた蟹はトラックで加工工場に移送され、そこで大きさの選別などをした後で茹でられているに違いなく、その加工工場が海岸沿いに建っているのであればまだしも、単に港町なだけであって決して浜に建築されている訳ではないだろう。

売られている商品の中には冷凍輸入品を海に面していない町の加工場で茹でたものもあるだろうし、『朝取れ』 と 『浜ゆで』 という言葉に間違いはなくても、実は 『数日前の朝』 に取れ、中国や韓国、ロシアの 『浜』 で茹でられた蟹という代物だってあるのではないかと疑ってかかったほうが良いだろう。

今は流通網が発達し、冷凍、冷蔵技術も進んだので自宅にいながらにして全国、全世界の美味しいものを食べることができる。

しかし、やはり昔のように名物、名産品はその土地に行って食べるのが間違いなく、鮮度の高い食材を目の前で調理してくれる寿司屋か料理屋で地酒を呑みながら味わうのが良いのではないだろうか。

金銭的にも時間的にも心のゆとりもない場合は、それが虚偽の食材だったとしても仕方がないと覚悟した上で、それなりの雰囲気だけ味わうのが精神衛生上もよろしいのではないかと思ったりしているところだ。