最近になって不思議な光を見るようになった。
一カ月くらい前のことになるが、夜中に目が覚めてトイレに行き、中から出ると洗面所の床の一部がオレンジ色に乱反射している。
それは直径 30センチくらいの円形で、夕日に照らされオレンジ色の光を反射する川面のようにキラキラと、寝ぼけた目にはまぶしすぎるほど強い光を放っていた。
そんなところに水などあるはずもなく、きっと窓の外から光が射し込んでいるのだろうと思い、外を見てみようと一歩踏み出したとたんに忽然とオレンジの光は消えてしまった。
慌てて窓を見たがガラスの外は暗く、光があった様子も遠ざかっていく様子もない。
しばらくその場に立ち尽くし、今のは何だったのか考えてみたが答えなど得られるはずもなく、きっと寝ぼけていたのだろうと自分に言い聞かせて布団に入ったが、あの美しいオレンジ色のキラキラ輝く光が目に焼き付き、なかなか眠ることができなかった。
朝になって目を覚ますとそのことはすっかり忘れてしまっていたのだが、それから数日後になって再び光を見ることになる。
『お買い物日記』 担当者のお供で自転車に乗って買い物に行く途中、右目の端にキラキラとオレンジ色に輝く光の映像が飛び込んできた。
何かと思って振り向くと、すぐ横をまばゆいばかりに光り輝く蝶がヒラヒラと飛んでおり、それがあの夜に見たものと同じオレンジ色であることを思い出す。
それは一瞬、いや、一秒くらいのことだったのだろうか。
目で追っていたはずの蝶は一瞬にして消え去り、忽然と姿を消してしまった。
そこで夜中に見た光のことを思い出し、さらに気づいたのだが、あの水面に夕日が乱反射してキラキラしているように見えたのは、実はたくさんのオレンジ色に輝く蝶が一箇所に集まっている光景だったのではないだろうか。
そう思えば思うほど、あの夜の光が蝶の集まりだったように思えてくるし、記憶として残っている映像も意思に引きずられて変化したのか、水面より蝶の集まりだったように見えてくる。
それから何事も無く過ごしており、そのことも忘れかけていた数週間後、前回とは違う店まで買い物に出かけた際に再びオレンジ色に輝く蝶が視界に飛び込んできた。
今回もやはりすぐ近くを飛んでいたかと思うと目の前でパッと消えてしまう。
一度ならず二度までも同じものを見たことを単なる錯覚とか妄想で片付けて良いものだろうか。
そして、もう忘れることはないだろう。
あの夜の出来事と昼間の二度の出来事を。
二度あることは三度あるはずなので、いつか再びオレンジ色に輝く蝶が姿を表してくれるのではないかと期待している。
精神や頭、目がおかしくなった訳ではない限り、それを見たのには何らかの意味があるはずであり、何らかの結論に達しない限りは何度も同じものを見るかもしれない。
今後、二度とオレンジ色の蝶を見なかった場合、2011年8月から9月の一時期、精神状態が不安定になって妙な幻覚を見てしまったと、この雑感か 『独り言』 に記すことにしようと思う。