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犬たちのいる風景 2010年冬の2犬たちのいる風景 2010年冬の2

今年は例年になく雪の多い年なのだそうで、何度も除雪しなければならないことと、その雪の捨て場所の確保に困り、ずっと格闘が続いている。

しかし去年もそうだったように、今年の冬も雪が積もって楽しいことだってある。

家の前に積もった雪には去年と同様にお母さんと犬の足跡が残っている。

いつも必ずある足跡なので、それがないと心配になってしまうくらいだ。

実はその足跡を目で追うと、隣の家の敷地に入って行く跡と、そこから出てくる跡がある。

お買い物日記』 担当者が隣の奥さんに聞いてきた話しだと、その犬とお母さんは以前の雑感に書いた隣で飼われている狸顔の犬と友達なのだそうで、いつも立ち寄っては少し遊んで帰っていくのだそうである。

で、その狸顔の犬は独り言に書いたようにカラスが怖い。

悪いことに隣の家の角がごみステーションになっているため、ゴミの日となると何羽ものカラスがやって来て塀の上や電線にとまっている。

そうなったら狸顔の犬はもうダメで、「くぅ~ん、くぅ~ん」 と実に悲しげな声で奥さんを呼び、なんとかして家の中に入れてもらおうと必死になるのだ。

散歩帰りにいつも犬小屋を見るのだが、ちょうど同じ頃に散歩に出かけていることが多く、なかなか姿を見ることができない。

逆に奥さんが外にいてゴミ出しの準備をしていたり除雪をしていたりすると犬小屋にいるということになるので、朝の挨拶もそこそこにジッと小屋に視線を送ることが多くなってしまう。

隣の奥さんもそれに気づいているらしく、つい先日も朝の挨拶をした後に犬小屋を見ていたら 「今日は寒いから玄関に入れているの」 と先回りして言われてしまった。

玄関にマットを敷いてあげて、その下に使い捨てカイロを入れてやったところ、ことのほかそれが気に入ったようで、犬はその上でジッとしたまま動かないそうだ。

猫はコタツで丸くなっても犬は喜び庭駆け回るものである。

それがホカホカのマットの上で丸くなって動かないとは何という奴か。

そして、この近所で飼われている犬は血統書などない雑種でもみんな可愛がられて幸せそうだ。

近所にある薬屋さんで飼われていた犬も雑種ではあるもののとても可愛い犬だった。

家の裏の広い範囲が金網で囲まれ、その中で自由に動き回っている犬だった。

昼間は日当たりの良い庭につながれ、夏の日差しが眩しい日などは木陰て昼寝している優雅な暮らしぶりの犬だった。

あまり番犬としては役に立たないだろうが、一度も吠えられたことはなく、ほんの数回しか声を聞いたことがない犬だった。

どこかボーっとしていて横を車や人が通ろうが気にすることなく、いつも遠くを見ている犬だった。

餌を食べていると周りをカラスが取り囲み、すきを狙って横取りされるような間抜けな犬だった。

あまり機敏に動くほうではないのに朝の散歩で通りかかると体を斜めにして家の裏からこちらを見てくれる犬だった。

・・・。

この冬、その犬が姿を消した。

・・・。

例年になく寒い日が続いたので、最初は家の中に入れてもらっているのだと思っていた。

一週間が過ぎても二週間が過ぎても犬は姿を表さなかった。

そして犬が飼われていた場所に雪が積もり、二度と足跡がつくことはなかった。

・・・。

とても大好きな犬だっただけに、居なくなってしまったことはとても悲しいし寂しい。

しかし、愛情いっぱいに育てられたのだから、幸せで満足できる飼い犬生活だったことだろう。

生あるものには必ず死があるのだから現実として受け止めなければいけない。

そして、その他の犬たちには一日でも長く生きてもらって楽しませてくれることを願うとしよう。