過去に通った歯医者
久々に歯の治療を始め、以前はボロボロになって歯が抜けようと折れようと歯医者さんに行かずに放置しておいたところ、口内が荒れ放題に荒れた廃屋のごとき状態になってしまったことを思い出している。
以前勤めていた会社の社長に脅され、なだめすかされて、やっと治療に行った歯医者さんが最悪で・・・というのが前回までの流れだった。
もう二度と歯医者さんで怖い思いをするのは嫌だったので、それからの自分は生まれ変わったように定期的に検査を受け、ちょっとでも悪くなっていれば早目に治療してもらうように心がけるようになったのである。
先週の雑感にも書いたが医者と患者には縁とか相性というものがあり、いくら腕が良くても人柄が好きになれなかったりしたら長くは続かない。
何回か通っておこなう治療にしても、何年間にもわたって定期的に訪れて検査をしてもらうにしても、相性がよくて信頼関係が構築されていなければ難しいだろう。
だれでも同じだと思うが、大阪に行って最初に歯医者さんに行く必要に迫られたとき、近所の人とかに評判を聞いて回ったものである。
当時は今ほどネットが普及していなかったことと、掲示板やブログなどで情報収集する手段を持ち合わせていなかったこともあり、頼れるのは土地に古くから住んでおられる人達によるフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションで得られる情報のみだ。
中でも向かいに住んでおられたお年寄り夫婦とそのご子息、さらにはその子供という親子三代にわたって通っているという歯医者さんに魅力を感じ、近くの商店街にあるその歯医者さんに通うことに決定した。
最後に治療を受けた歯医者さんがとんでもないところで、さらには引越し前の突貫工事が災いしたのか、あるいは極端に腕が悪かったのか、入れてもらった差し歯がポロリと抜け、次に別の前歯も抜け、それからは年に一度くらいの割合で右や左の歯がポロリポロリと抜けていた。
そのたびに歯医者さんに行って治してもらっていたのだが、その先生は一度たりとも以前通っていた歯医者さんを悪く言わなかった。
よく抜ける一本は型が合っておらず、中に空間ができているので噛む圧力によって微妙に動き、せっかくセメントで固定しても少しずつ弱くなって抜けてしまう。
同じく抜けやすいもう一本は、土台となる本物の歯を削りすぎて薄くなっていたために噛む力に耐え切れず、割れてしまっていて何度入れなおそうと固定させるのは難しい。
いわば前回の歯医者さんの技術が劣っていたと言えるだろうが、決してそのことは口にしない。
営業職でも同じことが言えるが、他社(他者)を悪く言って自社(自分)を良く見せようというのは最低の手法であるにも関わらず、その手を使ってしまう人が実に多い。
しかし、その先生はそういうことを口にせず、作り直したほうが良いとも言わず、抜けた差し歯を何度も持って行ったが、その度に淡々と治療してくれた。
その人柄に加え、とてもおだやかな口調で話してくれたり説明してくれるところが好きで、大阪に住んでいる間は最後までお世話になることになったのである。
~ つづく ~