ゲーム

最近、ゲームをしている時間が無駄なんじゃなかろうかと思うようになってきた。

家庭用ゲーム機、パソコン、スマホと様々な機器を通して30年以上もゲームをしてきたが、そろそろ卒業しても良いころだろうか。

思い起こせば1978年に爆発的ブームとなったゲーム、『スペースインベーダー』が発端だった。

いや、その前に温泉旅館などに設置されていたビデオゲームのテニス。

それをエポック社が世界初の家庭用ゲーム機『テレビテニス』として発売したのをちょっと裕福な家庭に生まれた友達が持っていたので、何度も何度も遊ばせてもらったのがゲームの世界への導入口だったかも知れない。

スペースインベーダーを発端としてテレビゲームが世に広まり、町のあちらこちらにゲームセンターができた。

喫茶店にもテーブル型のゲーム機が導入されて飲食代以上の売り上げを誇った時代もあり、その際には店内のテーブルのすべてがゲーム機となった店もあったほどだ。

その頃の自分は御多分にもれずゲーム三昧の毎日を過ごしていて、24時間営業のゲームセンターで夜を明かしたり行きつけの喫茶店が閉店時間になった後も店の鍵を借りて朝までゲームを続けたりしていた。

開催されたゲーム大会で優勝し、賞品として自動車をゲットしたが免許を持っていないので速攻で売却し、得た資金をまたゲームにつぎ込むという訳の分からないことをして中古自動車に乗っていた友達から鬼のような勢いで責められたこともある。

1983年に発売されたファミリーコンピュータ、俗称ファミコンを購入してからは、いつでも好きな時に 100円硬貨を投入しなくてもゲームができるので益々没頭した。

そしてついに、ゲーム好きが高じてゲームを開発する会社に勤めることになる。

それがコンピュータ業界に入ったきっかけであり、今もそれを生業としているのだから人生というものは分からないものだ。

過去の雑感に何度か書いたように、当時の業界におけるプログラマーを含む使用人への扱いはひどいもので、低賃金で長時間労働。

今はちょっと待遇が悪いくらいですぐにブラック企業とかブラックバイトなどと言われるが、あの頃は労働基準法もなにもあったものではない過酷な労働環境で月に 100や 200時間の残業など当たり前、それも残業代などまったく支払われず、出勤時のタイムカードは自分で打刻するが退勤はすでに終業時間に限りなく近い時間で打刻されているという、奴隷のような生活を送っていた。

そんな環境について行けずに辞めることになっても退職金など支払われず、ボーナスの基準も当時は花形だったエレクトロニクス産業を参考にするのではなく、すでに斜陽産業だった炭鉱労連を基準にするという実にに不可解な賃金体系。

一発当てれば億の単位の利益が得られるゲーム業界だったため、創業から数年で自社ビルを建てるまでに会社は成長したが社員たちの会社生活は酸鼻を極めた。

完成した自社ビルに初めて足を踏み入れた時、
「この柱は俺たちの血と肉、汗と涙でできている」
などと言ったものだ。

そんなひどい状況の中でも会社を辞めなかったのは、ひとえにゲームが好きだったからだろう。

当時の自分はプログラミンをするのではなく、ゲームに登場するキャラクターをデザインしたりゲームの中の景色や背景を描いたりしていた。

子供のころからずっと絵を描くのが大好きでゲームをするのも作るのも好き。

大好きなことをやりながら給料をもらっているのだから今から思えば理不尽なことも理不尽だと思わず、低賃金なのも長時間労働なのも気にならなかった。

若くて体力もあったので、深夜 23:00くらいに帰宅してもまだ家でゲームをしたりしていたし、人気ゲームの新作が発売になると行列に並んで手に入れ、カフェインなど摂取しながら徹夜で遊んだものである。

任天堂のファミコン、スーパーファミコンに始まりセガサターン、ドリームキャスト、NECのPCエンジンから SONYのプレイステーションまで、ありとあらゆる家庭用ゲーム機を保有していた時期もあったくらいのゲーム好きで、ゲームソフトの保有数も 100を軽く超えていたのではないだろうか。

それほどゲームが好きだった訳で、まさに天職だと思っていたが、年齢とともに徹夜での作業など無理がきかなくなってきたことと、会社への不満、不信感などから転職を決意した。

その後は同じコンピューター業界であるもののゲームとは無関係な道にすすむことになる。

しかし、ゲーム好きは相変わらずで家庭用ゲーム機、パソコンでのゲームなどで遊んでいたが、スマートフォンが近年になって登場すると、その手軽さからゲーム機やパソコンでのゲームをすることはなくなった。

そして現在もスマホでゲームを楽しんでいるが寄る年波には勝てず、1-2時間もやると目は疲れるし腕は痛くなるし、なにより集中力が続かない。

以前のようにどっしり腰を落ち着け、気構えてゲームをすることはなくなったが、簡単に始められるのでついついスマホに手が伸びてしまう。

それでも、冒頭に書いたように最近は時間の無駄だと思えてきた。

今は暇つぶしにゲームをしてると言いたいところだが、そもそも自分には潰さなければならないほどの暇があるのか。

録画している海外ドラマは在庫が積みあがる一方だし、運営している各種Webサイトのスマホ対応だって終わっていない。

そして、ゲームをしているせいで寝るのが遅くなったりするが、睡眠時間を削ってまでやることなのか。

急に止めることはないと思われるが、少しずつ時間を減らそうかという気にはなっている。

いや、ボケ防止のために一定時間のゲームはむしろ続けるべきか。

いやいや、止めることなどできず、死ぬまで遊び続けたりするかもしれない。

果たして 5年後、10年後の自分はどうなっていることだろう。