終活

いよいよ来週の今日、10日の土曜日にはショウコがやって来る。

施設に入ると決まった 8月10日から約一カ月、様々なことを通して人生の幕を下ろすために必要なことを学んだ。

生きている間は、あれもほしい、これもほしいと衣類や電化製品などを買ったりするが、最後の最後には邪魔になるだけだし廃棄するには費用まで発生してしまう。

まだ購入して数年しか経っていない一流ブランドの服や家具、新品同様の家電であればそれなりの金額で売れるだろうが、しまむらやユニクロで購入した服が売れるはずもなく、ニトリやホームセンターで購入した家具をお金を払ってまで持って行ってくれる業者などありはしない。

たとえブランド品であっても若いころに着ていた時代遅れの服や、使い込んだバッグなど 100円の価値もないだろう。

そう考えると物を大切にしないとか言われようと、高額で買ったものでも流行遅れになる前に売ってしまう方がよっぽど効率的だし損が少ないと言える。

先週の雑感にも書いたように、ショウコは躊躇なく衣類を取捨選択し、その数を大きく減らした。

同様な作業は昨年の 9月にも行っており、その時やり残したタンスの中の服なども合わせると、最後に残した服の数は 1/30、いや 1/50くらいになったのではないだろうか。

そうなのである。

おしゃれ番長のショウコですら、最後には本当に好きな服が手元に何着かあればよいのである。

我が家のクローゼットには二度と袖を通さないであろう服があり、いつか整理しなければならないと思ってはいたのだが、良い機会なのでショウコの引っ越しが終わって少し落ち着いたら処分しようかと思う。

若いころは見栄を張って有名デザイナーのスーツを着ていたが、今はでっぷりと突き出た腹が邪魔して着ることはできない。

若いころに好んでいた地味なデザインの服も、この歳になって着ると単なる爺さんになってしまう。

ショウコ並みに割り切って整理すればクローゼットの半分近くは空きスペースになるのではないだろうか。

叔母のレイコも終活を始めており、家の中の不要なものを廃棄し、ブランド品のバッグや靴などは姪っ子に譲ったりしながら身の回りを整理している。

それを少しずつ進めて 2-3年で終わらせ、以降は札幌にでも移り住むつもりでいたことは以前の雑感に書いた通りだが、ショウコが急に施設に入ることが決まったことが影響しているのか、今年中に今の持ち家を手放して高齢者が暮らしやすい集合住宅に引っ越すと言い出した。

その物件は同じ町にあるので単なる町内の引っ越しとなるが、一軒家からの移動となると持ち出せるものも限られるので廃棄作業などが大変だろう。

以前、レイコから
「葬式で飾られる写真が妙に若いと恥ずかしい」
と言い、年齢相応の写真を使ってほしいので 5年に一度は写真館で遺影に使える写真撮影をしていると聞いた。

次兄の遺影でも使いたい写真がなくて困ったこともあり、その話を聞いたのでショウコを連れて自分たちも含めた遺影候補の写真を撮影しておいた

これはショウコの終活でもあれば、自分と 『お買い物日記』 担当者の終活の一環でもある。

身の回りのことであれば不要なものを捨てたり必要なことをやっておけば良いが、面倒なのは先祖代々のものだ。

先週の雑感でも触れたように、大きな仏壇は施設にも我が家にも納まらないので魂抜きをしてもらい、位牌と過去帳のみ移動することにした。

現代日本の住宅事情を考慮すると、立派で大きな仏壇を相続するなど不可能に近い。

そこで今度は小さなものにしようと昨日の午後に仏壇店に行ってみたところ、対応してくれた女性が実に感じの良い人で、色々と思い悩んでいることをすべて話し、様々な解決策を教えてもらうことができた。

同じく先週の雑感に書いた『永代供養墓』の件は、ネットで調べたところ札幌にあることが分かっていたので話してみると、実はこの町にも合祀堂が存在し、宗旨宗派に関わらず永代供養してくれる寺があるという。

それならばお参りに札幌まで行かずに済むし、彼岸や盆にお参りするのも楽だ。

料金も札幌のものと大きな差はない。

それを聞いて喜んでいると、問題点も指摘してくれた。

今までのお寺さんとの関係を断ち、この町で同宗派のお寺さんとの関係を構築しない場合、母親や自分達が死んだときに誰がどこでお経をあげ、初七日や四十九日の法要を誰がやるのかということだ。

都会であればネットでレンタルお坊さんを呼ぶこともできるが、田舎町では難しい。

その永代供養墓をしてくれる寺では年間数千円を支払っておけば、いざという時にお経も上げてくれるし法要も営んでくれるとのことだが、それは事実上の改宗となってしまう。

前回はそんなことまで考えずに提案し、ショウコもいともあっさり同意したが、改宗となるとどうなるだろう。

そして、実家の仏壇にはなぜか位牌が 3つもあるのだが、そんなに必要なのか聞いてみると、亡くなってから一定年数を経過したら過去帳に記載して位牌は処分するものだと教えてくれた。

仏壇も小さくすることだし、これを機に位牌も整理しようと思うが、一応はショウコに確認をとらねばなるまい。

これは少子化が社会問題となっている現代、また晩婚化や生涯独身の人が増えている現代、子供がいなかったり女の子しかいなければ親自身が、一人っ子だったり長男だったりすれば自分自身が、いつか直面する問題である。

そして、先祖代々の代々が長ければ長いほど経済的負担も大きくなる。

永代供養墓に入るにしても料金は発生するが、それは人数分が必要だ。

つまり、墓や納骨堂に納められている遺骨が、例えば両親だけなら二人分、仮に一人 10万円だとすれば 20万円、両親と祖父母となれば 40万円、さらにその先祖となれば 60万円、その他にきょうだいなどが入っていれば・・・。

過去帳にどれだけの人数が記載されているか確認するのが恐ろしい。

格差社会と言われる現代、その経済的負担に耐え切れない人も増えるのではないだろうか。

今、母親であるショウコの代わりに墓や納骨、仏壇のことを心配し、色々と手を打っておくことは自分達の終活でもある。

服を整理し、その他の持ち物も整理し、定期的に遺影を撮影し、少しずつ終わりの準備をしていくべきなのかもしれない。