嗚呼日本人 4

嗚呼日本人 ~目次~

ワールドカップでは日本も健闘したが惜しくもトルコに敗れてしまった。いかにも日本的だったのは 「よく頑張った」 「夢をありがとう」 など賛辞の言葉ばかりで敗戦の理由を冷静に分析することを忘れている。問題点というのは明らかにするから解決できるのであって、放っておけば解決できない。よく頑張った日本代表チームを称えるのは当然として、何がいけなかったのかも分析してほしかった。

  ゴルフの試合で一打目をミスショットし、そのホールをボギーとしてしまったにも関わらずギャラリーから 「ナイス・ボギー」 という声援があがったのを外国人選手が不思議な顔をして聞いていたという話がある。ギャラリーからすると 「あれだけのミスをよくカバーしてボギーで終わらせたね」 という意味の 「ナイス・ボギー」 だったのだろうが、そんな浪花節的な発想では更に上を目指すことは難しいのではないかと思う。

  かと言って、何度も書いているように自分はサッカーに詳しいわけではないので敗戦の理由を分析することなどできない。したがって、「よく頑張ったね」 とか 「次回(2006年)に向けての重要な経験ができたね」 などと典型的な日本人思考になってしまう。結果的に偉そうなことは言えないのである。

  スポーツの世界で ”たら” とか ”れば” を使ってはいけないそうだが、もう少しだけ頑張ってい ”たら” もう少し長く夢を見られたのに・・・。あの時のトルコ戦で日本が勝ってい ”れば” 今日(06/22(土))は大阪での試合だったのに・・・。ワールドカップに気を取られていて気が付けば阪神はズルズルと順位を下げているし、大阪府民のテンションは下がりっぱなしである。

  この雑感で予想した通り、にわかファンが溢れ出てきたことと、熱しやすく冷めやすいのは何とも日本人らしい。にわかにサッカーファンとなり、熱病にでもおかされたように騒いでいたくせに日本が敗退すると急に冷めてしまったようだ。日本が負けてしまったことで 、にわかサッカーファンの 70%は冷めてしまったのではないだろうか。そして ”ベッカム様” 率いるイングランドが負けたことで更に 20%程度の人が冷めてしまい、これからもサッカーという競技そのものを楽しむ人は 10%程度ではないだろうか。

  勝手な推測で申し訳ないが、その 10%の人で Jリーグの試合会場に足を運ぶ人は何人いるだろうか。世界の中でもレベルの高い試合を見たあとで Jリーグの試合を見て満足できる人が何人いるだろうか。そしてこれからもサッカーという競技そのものを楽しむ人はどの程度いるのであろう。サッカー人口が増えて Jリーグの組織やチームの運営が楽になると良いのだが、大きな効果は期待できないような気がする。

  日本人らしいといえば、イングランドのキャンプ地だった淡路島の津名町では小学生がベッカムから貰ったサインを津名町教育委員会が取り上げてしまったらしい。単純に「サインが貰えない子供がかわいそう」 ということなのだろうが、なんでもかんでも公平にすれば良いというものでもなかろう。もらえる人もいれば、もらえない人もいる。勝つ人もいれば負ける人もいる。

  最近の小学校では運動会の時もみんなが手をつないで一緒にゴールさせたりしているらしい。それも 「負けた子がかわいそうだから」というのが理由なのだろうが、そんなことをして何になるのだろう。スポーツに限らず何にでも勝ち負けがある。勝者の陰には何人もの敗者がいる。小さな頃から負け方もきちんと学習しておかなければ、ロクな大人になれないと思う。

  なんでも公平に平均的にしていると、少しでも平均から外れたり負けそうになった時の対処法が身に付かないではないか。このままだと人が持っているものを自分が持っていないなど、ちょっとした理由で ”キレる” 人間や何かに負けた時に過剰に精神が反応してしまい、人を傷つけたりする人間が増えてしまうのではないだろうか。大人はバカなことばかりしていないで勝者を尊敬したり勝者に敬意を払うことを子供に教えるべきだと思う。

  人と競わないのであれば競技ではなくなってしまう。自分の子供が敗者になることを嫌って一緒にゴールさせたりするくせに勉強や進学先は平気で競い合わせている。どこか矛盾していることに気がつかないのだろうか。津名町の件は結果的には生徒達にサインを返すことで落ち着いたらしいが、過保護にするのはいいかげんにして、これから先の人生にも無数の勝敗が待ち受けていることを教えてやった方が良いと思う。

  今回のワールドカップでは日本人の恥ずかしい部分も見えてしまった。6月14日、日本が決勝トーナメント進出を決めた夜。共催国である韓国も決勝トーナメント進出を決めた。TVには日本と韓国両方のサポーターが喜ぶ姿が映し出されていた。インタビューを受けた韓国人サポーターの多くが 「日本と一緒に決勝トーナメントに出られて嬉しい」 と答えていたが、日本人サポーターで 「韓国と一緒に・・・」 と答えた人を見なかった。

  韓国人サポーター達が集まって昼間におこなわれた日本の試合を TVを観ながら応援している姿があったが、その夜の韓国の試合を応援する日本人サポーターの姿は見ることができなかった。実際には 「韓国と一緒に・・・」 と答えた人や夜の試合で韓国を応援していた日本人サポーターもいたと思いたいが、それが TVに映し出されることはなかった。

  6月18日、日本がトルコに敗れたその日の夜、韓国が無理と言われていたイタリアに勝利した。しかし、それを喜び、素晴らしい試合をした韓国に敬意を払う日本人サポーターの数は極少数だった。東京にあるリトルコーリア(韓国料理の店が建ち並ぶ地域)では韓国の人が熱心に自国の応援をしていた。そこに日本代表ユニフォームを身に付けて韓国を応援する日本人サポーターがいたことに少しだけ救われた思いがしたが、その数はあまりにも少なすぎた。

  もちろん韓国人が嫌いな人もいるだろう、アメリカ人が嫌いな人もドイツ人が嫌いな人もいるだろう。しかし、韓国人に特別な感情がない人は共催国でもあるのだから、もう少し韓国の応援をしても良いのではないかと感じてしまった。”あの” イタリアに勝利したのだからもっと韓国チームを尊敬しても良いのではないだろうか。日本が負けたあとの一番の関心事はベッカム率いるイングランドに移ってしまったのが悲しかった。

  考え方は人それぞれだろうが、自国のこととアイドル的有名選手にしか感心を示さない日本人はあまりにも心が狭く 「やっぱり島国根性しか持ち合わせていないのか」 と、とても残念に思えてしまった一週間だった。そして・・・。韓国がスペインに勝った今日(6/22)、我家では日本戦より控え目ながらも小さくパチパチと拍手なんぞしたりしているのであった。