嗚呼日本人

嗚呼日本人 ~目次~

普段はとくに意識していないが、「ああ、日本人でよかったな〜」と思うことがある。日本人であることが恥ずかしいことも多いが生まれも育ちも日本である事実は変えようがない。

 日本人で恥ずかしいと思うのは”ブランド好き”が大挙として海外の専門店に押し寄せる姿を目にした時。ヨーロッパ旅行の経験はないが、ルイヴィトンやグッチ、カルティエなどの専門店は若者から爺、婆まで日本人で埋め尽くされていると聞く。現地の人にとっては子供みたいな”ネーチャン”が高額商品を買い漁っている姿をうさんくさそうに見ているらしい。

 格調高い店内でギャーギャー騒ぐだけでも迷惑な話だが、店内や出入り口で”記念写真”を撮るバカモノまでいると聞いている。それなりのブランドは、それなりの人格や経験を備えた人が身に付けるべきであって、「みんなが〜持っているから〜」程度の感覚で買われた日にはブランドの価値が下がってしまうと思う。実際に、価格は別として、賢くなさそうなヤツが身に付けているとユニクロでも GAP でもヴィトンやプラダであろうと、すべて大衆品に見えてしまう。

 自分自身がとても恥ずかしかったのは、ツアーに参加してアメリカに渡航したときである。日本の旅行代理店が組んだ予定に無理があったのか、アバウトなアメリカの交通事情が原因したのかは定かではないが、飛行機の乗り継ぎ時間があまりにも短かったため、ファースト・フード店で飲み物とピザを受け取り、全員それを持ったまま次の飛行機に乗り込んだ。

 片手に飲み物、もう片手にはピザをもった日本人が何十人も乗り込んできたものだから、当然のことながら機内に乗り合わせたアメリカ人は、ただでさえ大きな目をさらに大きくして驚いていたり、クスクス笑っていたりした。そんなことをさせた添乗員にも腹が立ったが、それを拒むことをせずに団体行動をしてしまう自分にも腹が立ったものである。

 愛国心が強いほうではないが、海外から帰って来て日本食を口にした時、醤油や味噌の風味や味に触れた時は「ああ、日本人でよかったな〜」と心から思う。子供の頃はあまり喜ばなかった食べ物が、最近ではとても美味しく感じたりすることが多い。以前はハンバーガーやピザ、フライドチキンなどを主食のように食べていたが、最近では 3-4週間に 1回程度になってきた。やはり体内に受け継がれた DNA は日本食を求めているらしいのである。

 食事以外に「日本人で良かった」と思うのは国民性に関してである。1/17は阪神淡路大震災が発生した日で、先日の TV ではその後の神戸などを放送していた。そこでコメンテーターが、「あれだけ壊滅的な被害を受け、消防、警察の機能が完全にマヒした状態で略奪行為や暴動が起きなかったのは世界的に見て奇跡的なこと」と言っていた。

 ・・・この言葉には心から納得してしまった。日本は治安が良いと言われているが、それには秩序正しく善良な国民性が前提にあるからだと思われる。「このスキに金を盗む」と考える人もなく、「腹が減ったから人のいない店から食料を盗む」などというのは生存本能に近い次元だと思うのだが、皆が空腹に耐えながら励ましあっていた。このような国民性は世界に誇れることだと思うし、こういう国民だから自動販売機などの文化も育つのだと思われる。海外で自動販売機など設置すると、一夜にして破壊されてしまうに違いない。

 なにはともあれ、日本には日本の良いところもたくさんあるということを、あらためて感じさせてもらった言葉で、日本人も捨てたものではないと感じることができたのであった。