スケール

午前中、『お買い物日記』 担当者と話していて思ったのだが、耳から入った情報のみでその大きさや広さ、距離などを想像するのは難しい。

2011年 3月 11日に発生した東日本大震災は今も多くの傷跡を残しているが、あの過剰とも言える加熱報道によって、どれだけの人が不安になり、どれだけ世界に誤解を与えたことだろう。

当時の報道では、あたかも縦長の東北地方の太平洋側、地図で言えば右半分、そこまでではないにしても 1/4、1/3くらいは海水に浸かってしまったと錯覚するような勢いで大騒ぎしていた。

しかし、実際にはかなり大きな地図で見たとしても津波に襲われたのは海岸線から数ミリ程度の距離でしかない。

もちろん、それだって大変な被害ではあるが、まるで日本が津波に飲み込まれてしまったような勢いで報道するから海外メディアも驚いてしまい、国によっては日本への渡航規制を出すような騒ぎになってしまったのではないだろうか。

同時に発生した福島第一原子力発電所事故でも放射能、放射線がどうしたとか、どこの地域では何ベクレルを記録しただのと大騒ぎしたものだから、外資系企業が会社を閉鎖したり、日本で働いていた人が海外へ脱出する騒ぎになってしまったのだろう。

まるで福島県そのものが廃墟と化し、日本地図から福島県がなくなってしまったような勢いの報道が続いたが、実際には東北六県の中で最も面積が広く、海も含む半径 20キロは福島県全体からすればほんの一部にすぎない。

したがって、福島県産というだけで作物などを拒絶する必要などまったくないのにマスコミの過剰報道によって一切の出荷が停止されてしまった。

また、出荷した所で買い手がなく、廃棄されてしまうという悲しい現実も目の当たりにしたものだ。

そして、福島県全体が放射能に汚染されてしまったかのような錯覚を覚える過剰報道の余波で福島という地名がつくだけで観光などのキャンセルが相次ぎ、客が激減したものだから継続不能になってしまう事業者も多かった。

1997年、諫早湾干拓事業の潮受堤防の締切りでは、鋼鉄製の 300枚近い水門がまるでギロチンのように海に突き刺さっていくニュース映像が流され、全国に大きな衝撃を与えた。

あの豊かな有明の海がギロチンによって干上がり、生態系に壊滅的な被害をもたらし、風光明媚だった有明の観光事業にも大きな影を落として有名だったハゼ科のムツゴロウを釣ることもできなくなるとマスコミは伝えた。

その報道を見聞きしたとき、まるで有明海の入り口がギロチンによって塞がれ、有明湾そのものが消えてなくなるのではないかと思った人も多かっただろう。

しかし、実際には有明の諫早湾、それもその奥の部分なのでムツゴロウが絶滅するわけでも、それを釣るムツかけ漁がなくなるわけでもない。

国際宇宙ステーションがある宇宙空間は地表から 400Kmだ。

400Kmといえば、ちょうど直線距離で大阪-東京間である。

では宇宙はどこからかと言えば、地表から 100Km程度なので大阪からだと直線距離で滋賀県の彦根あたりか。

その直線を地図上に垂直に立ててみても驚くほど近い距離であり、それを世界地図、地球儀なのでやってみると地表から数ミリでしかない。

感覚的には地球を野球ボールやリンゴ程度の大きさと仮定すると、成層圏は少なくとも 1センチ程度はあるのではないかという気がするが、実際にはリンゴ程度の大きさだと 1ミリにも満たないのではないだろうか。

つまり、成層圏はその程度のものであり、それだけでしかないのだから、大気汚染などによって地球環境に大きな変化をもたらすのも当然だし、地球の空気を汚すことなど実に簡単なことだ。

成層圏でさえ地表から 100Km程度なのに、海の深さはそれの 1/10でしかない 10km程度が最深部と言われている。

つまり、世界地図を広げても深さは 1ミリあるかないか、リンゴだとちょっとしたキズやへこみより浅く、そこに水がへばりついているような感じだろう。

したがって、海を汚そうと思えば簡単に汚染できるほどの量しか地球には水が存在しないということだ。

マスコミは小さなことを大げさに騒いで見る側に実際より大きく錯覚させるような報道をするよりも、無限にあるように思えて実は有限で、それは思ったよりも少なかったり小さかったりするので大切にしなければならないと多くの人に知らしめるべきではないだろうか。