自分解体新書 - 1 -

自分解体新書 ~目次~

■ 毛髪

白髪化は順調に進んでいる。

いや、この場合は順調ではない方が好ましいのだが、本人の意思を無視してニョキニョキと白髪が姿を現す。

やはり季節要因だったのか、今は抜け毛の量が減っているものの、夏のはじめはシャンプーのたびにモッサリと毛が抜け落ち、それの 80%は黒髪だったのだが、独り言にも書いたように生えてくる髪は白い毛ばかりだ。

これも独り言に書いたが、実の母や血のつながった叔母にまで
「去年はグレーで良かったけど今年は真っ白になった」
などと言われる始末だ。

実を言うと若い頃は白髪が増えることを望んでいた。

今は見るも無残に老け込んでいるが、当時はどちらかと言えば童顔で、年相応に見られたことがなく、仕事で人と会って商談などしていても年齢と役職に見合わぬ風貌なのが気になっていた。

少し白髪も生え始め、それが日を追うごとに頭部全体に広がり始めた頃、ロマンスグレーと呼ばれる色調か、ひと思いに白髪になってしまった方が貫禄があるように見られるのではないかと思っていたのである。

確かにそう思い、白髪化を望んだ自分がいるのは事実だ。

しかし、いくら何でも、誰がこれほどの勢いで白くなれと言った。

今は少しでも黒髪が維持されるよう望んでいるが、本人の意志は完全に無視され、浴室の排水口には黒い毛が渦を巻いて別れの挨拶をしてくれている。

■ 眉毛

高齢になると眉毛にも白い毛が混じっている人もいるが、今のところその兆候はないようだ。

ただし、毛の量をなんとか維持している頭と異なり、若い頃と比較て眉毛は薄くなってきたように思う。

ちょっとヤンチャをしていた頃はご多分にもれず眉を剃ったりしていたが、今はそんなことをしなくても薄く細くなってしまった。

たまに精力の衰えを象徴する極太のオッサン眉毛が鬼のような速度で伸びてくるが、そんな目障りで老化の象徴のような毛は有無を言わさずバッサリと切り捨ててやっている。

■ まつ毛

2007年の10月を最後に、あれから白い毛は生えてこない。

どうやら白くなった毛は毛根から抜け落ちてしまったようだ。

数ミリしかなく、たった一本の白い毛だったが、眼球のすぐ近くにあるため常に視界に入り、妙に気になる存在だった。

右目のさらに右端で光が乱反射し、気になって仕方ないのだが抜いてしまうのは気が引けるという微妙な立場を有する白い奴なのである。

過去を調べてみると、白い毛が生えたのは 2003年、2007年と 4年周期になっているので、その4年後である来年、2011年に再び姿を現すかも知れないと少し期待したりしているところだ。

上述の毛髪と同様に毛が白くなるのは銅ミネラルの不足も一因らしいが、子供の頃から貧血気味だったことを考え合わせると自分は銅ミネラルを吸収しにくい体質であり、それと加齢が加わって一気に白髪化が進んだのではないだろうか。

さりとてこの歳になってから慌ててミネラル補給を試みても、すでに手遅れなのは人から言われなくても十分に自覚していたりするのであった。