デジタル化の波 ~目次~
以前に何度もデジタル化に関して書いているが、やはり映像、音楽のデジタル化に関しては世の中を劇的に変えたインパクトを持つものと思われる。
このブログや無数にあるWebページ、Facebook や Twitter など文字のデジタル化によって変わったことも多く、メディアのあり方までも大きく変えようとしているが、文字が発明され、石に刻まれることによって後世に歴史を継承できるようになり、それが紙に書かれるようになって印刷できるようになったことから書物として保存され、活字が生まれて書物の数が増え、ワープロの登場によって文字が電子化されて磁気テープ、フロッピーディスク、ハードドライブ、USBメモリー、クラウドサービスと保管場所が莫大な容量を持つところに置き換わったように、それは太古の昔から脈々と受け継がれる文字文化の変遷の一部でしかない。
しかし、音楽・音声や映像のデジタル化は、世に初めて蓄音機が登場した時のような、初めてラジオが登場して遠く離れたところで話している声が送り届けられた時のような、そして何より初めてテレビが発明されたときと似たインパクトを持つ。
古代文明から伝わる文字の歴史と比較すると音声が電波に乗ったのは 1900年、デジタル化され CDになったのは 1982年と、まだ 100年程度の歴史しかない。
それが映像となれば動画を電波で送受信できるようになったのは 1926年、動画のデジタル化に成功したのは 1983年と、また 80年程度のことだ。
文字が何千年もかけて進化してきたのと比較すると 1/10、1/100というごく短期間で劇的に進化しているが、人間というのは慣れるのが早いもので、今ではそれが当たり前のことになって誰もその恩恵をありがたいと思ってはいない。
少し前のことになるが、『お買い物日記』 担当者が ATMの順番待ちをしている際、小さな子どもを連れた母親が前に並んでおり、待ち時間が長くなってきたものだから退屈した子どもがグズりだしたらしいのだが、母親はバッグからスマホを取り出し、ササッと操作してアニメを再生すると子どもは大人しくなって画面に見入っていたという。
これが映像のデジタル化の恩恵でなければ何だというのか。
帰省ラッシュで渋滞する車の中でもそうである。
以前までなら退屈してグズる子どもの気を紛らわせる手段はなく、疲れて眠ってしまうのを待つしかなかっただろう。
ところが今は DVD、BD のようなコンパクトなメディアで持ち運べるため子供向け番組やアニメを流しておけば良い。
病院で診察の順番待ちをしている時、外食時に席が空くのを待っている時、子どもが騒ぎ出せばスマホでアニメを見せていれば大人しくなる。
親にとってこれほど便利なものはない。
いや、親だけでないだろう。
マージャンばかりやっていた若かりし頃、最低でも 2時間、長ければ丸一日と長丁場になる中で困っていたのは BGMだ。
以前はアルバムCDを聴くか、カセットテープに録音したものをリピート再生するしかなかったが、いくら好きなアーティストの曲であっても2周、3周すると飽きてしまう。
長距離ドライブの際も同様で、車で聴くものと言えば CDかカセットテープしかなく、同じ曲ばかり聴いて飽きると交換するということを繰り返した。
しかし、それでも数には限りがあり、結局は耳にタコができるほど同じ曲を何度も何度も聞く羽目になったものである。
ところが今は何千、何万という曲を小さなメモリーに保存しておき、それをランダムに再生することができる。
それどころか月額数百円という低料金で 1000万曲でも聴き放題とうサービスまで登場し、1曲約 4分と仮定してもすべて聞くまで 27,000日、76年もかかるという恐ろしい時代になった。
こんなシステムが以前からあれば、マージャンやドライブがより楽しかったことだろう。
それが当たり前となった今を思い、ピコピコいうビープ音しが出せず、8色しか使えない画像を画面いっぱいにに表示するまで 5秒ほど必要だったパソコン創世記を思い出し、時代の進歩、テクノロジーの進化というのは凄いものだと感慨にふけっている骨董品の自分がここにいる。