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先週の雑感で隣のマユちゃんが美容師への道を断念したことを書いた。

また新たな道を模索しなければならないのは確かだが、彼女は英語力を生かしてバイト生活をしており、きっとその道で生計を立てていくことになろうことは容易に想像がつく。

つまり、路頭に迷うことなく新たな道を歩み始めることになった訳だが、それは実にすばらしいことであり、現代の若者にしてはとても頼もしいことだと思う。

かなり以前から大学にも関わらず親による授業参観日があるという驚くべき事実は知っていたが、今は入学前の学校説明会も親に向けて開催されるらしく、親が学校を吟味して子の進路を決定したりする時代らしい。

自分の意志というものがなく、将来は何になりたいのかという子供の頃に持っていた夢は二の次、三の次で偏差値と経済力、親の意向を最大限に尊重した大学に進み、専攻したい学問も明確ではないまま数年を過ごし、自身が何者であるのか自分が何をしたいのか不明確なまま単なる安定志向で就職先を選ぶという、誰のためなのか分からない人生を歩み始めることになる。

そして、信念とか目標がない虚無な人生を人事担当に見透かされるがゆえに就職先が決まらず、次から次へと面接を繰り返し、ついには一社からも内定すらもらえず人生初の挫折を嫌というほど味わうことになるのだろう。

子供の頃から、どんな小さなことでも遊びでも運動でも優劣が明確で勝ち負けを経験してきた者と、温室育ちで競争を避け、親に守られて育ってきた者では目の前の大きな壁への対処法、受ける挫折感への処置法において大きな違いが出るものと思われる。

温室育ちは初めて見る目の前の大きな壁と、底知れぬ深さの挫折感を乗り越えることができずに心折れてしまい、そのまま家に引きこもりニート生活へと移行していく確率が高かろうことも容易に想像できるというものだ。

育て方を間違った親、意思を持たぬ子、その双方の自己責任が相当なものであるはずなのに、就職弱者だの雇用システムの問題だのと社会問題が圧倒的に不利な条件を生み出していると逆切れとも言える責任転嫁で政治に不満を持ったりする。

そのくせ成人になっているにも関わらず選挙の投票には出向かず、政治そのものに無関心という誠に自己中心、利己主義的な奴らばかりで腹が立つ。

最初は親に勧められたのか、自分から始めたいと言い出したのか分からないが、マユちゃんが小さな頃から高校を卒業するまで英語や習字を続けてこられたのはそれが嫌いではなかったからだろう。

逆に好きでなければ中学や高校になってまで塾通いを続けるはずもなく、特に習字などは普通であれば通うのを止めて学習塾に切り替えるか、単に面倒とかウザい、かったるいなどという理由で行かなくなる若者は多いはずだ。

それを街を出ることになるまで続けたのも、大学進学ではなく美容の専門学校に進むことを決めたのも彼女の意思で、どの学校に通うのかも自身で決め、大きな障害でその道を断つことを決めたのも彼女自身である。

ふわふわとして信念を持たず、なかなか就職先が決まらないと周囲に不満を持つことしかできない大学生に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。

かく言う自分も、実は超利己主義で、信念などとは別の次元でワガママに生きてきたので将来を持たない若者に対して余計に苛立ってしまう。

子供の頃から絵を描くのが好きで、ヒマな授業中はノートに、回答する気のないテストでは用紙の裏に絵を描いて叱られていた。

絵の勉強ができる学校に進み、デザイン事務所にでも就職できればラッキーなどと思っていたが、学生の頃にバイトで始めたレンタルビデオ店での仕事が楽しく、ただで映画やミュージックビデオが見られるのも嬉しかったので、そのまま就職することすら考えた。

親の影響で料理にも興味があったので、レストランの厨房でのアルバイトもやり、料理作りが楽しくなってそのまま料理人を目指そうかと思ったこともある。

しかし、結局は絵とかデザインへの興味は薄れることなく、一日に必ず一枚は絵を描いて寝るという習慣は何年も続けた。

そんなことをしている間に世の中にパソコンや家庭用ゲーム機が浸透し始め、ゲーム三昧の日々を過ごしている中、こんなに楽しいゲームと大好きな絵を活かせる職業はコンピュータグラフィックス制作しかないという思いに至り、社員募集などしていないのに勝手に履歴書を送って面接に漕ぎ着け、どうしても働きたいのだと切々と訴えかけてバイトからという条件付きながら無理矢理に働かせてもらったのがコンピューター業界への入り口だ。

つまり、自分の好きなこと、興味のあることしかしておらず、嫌々ながら仕事をしたことがなく、嫌いなことになど最初から手を出さないという実に身勝手な生き方をしている。

もちろん、絵やデザインだけすれば良いというものではなく、事務処理や外部との交渉、他部署との調整役や、やりたくもない管理職の仕事もやってはきたが、好きな業界の中で働いているので多少のストレスはあったものの大きな苦痛は感じずにすんだ。

そして、色々あった挙句、今は再び Web制作というデザイン系の仕事で、コンピュータを使いながら好きな絵を描いたりもできている。

もちろん運が味方してくれた面もあるし、家族に迷惑をかけた面もなくはないが、身勝手なくらい自分で決め、自分の好きな道を歩んできたという自負があるので、ちょっとしたことで路頭に迷ったふりをして困ったふりをしてるヤツが好きになれない。

その点、隣のマユちゃんはまだ高校を卒業したばかりの女の子だというのに、そこらのボンクラなんかよりしっかりとした足取りで、一歩一歩進んでいる姿が眩しいくらいに美しく見える。

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