年齢とともに趣味や嗜好は変わる。
この雑感や管理人の独り言に幾度となく書いていることではあるが、自分でも一番驚く変化は食べ物の好みだ。
子供の頃から好き嫌いがなく、世の子供が泣きながら食べさせられるピーマンやニンジン、ネギだろうと何だろうと平気だったが、それでも山菜類や香りの強い野菜などは嫌いではないまでも決して喜んでは食べなかった。
ところが今はそういう物が食べたい。
昨日の買い物でも売られていたタラの芽の天ぷらに心奪われ、ついつい購入して春の訪れを待ちわびながら美味しくいただいた。
タラの芽だとかフキノトウ、菜の花や春菊など、この時期に旬を迎えるものは香りが強く多少の苦味を伴うものが多いので、あまり子供たちには人気がないだろうが、この歳になるとたまらなく美味しい。
タラの芽やフキノトウ、菜の花などは流通網が発達していなかった昔は簡単に手に入るものではなかったので、それほど食卓に上ることはなかったが、鍋料理に春菊はどっさりと入っていた。
親は美味しと言って食べるが、子供にとっては美味しくも何ともなく、弁当や寿司折りに飾りや仕切りとして入っている緑色のバランと同程度の単なる彩りくらいだと思っていたものだ。
ところが今となっては春菊が食べたくて鍋料理をすると言っても過言ではないほどであり、他の具材はその時々で肉であったり魚であったりするものの、この時期の鍋に春菊は欠かせない。
食べてもさほど味のしないコンニャク類も好んで食べなかったが、今はブリブリと歯ごたえのある白滝などはとても美味しいし、おでんにコンニャクが入らないことなど考えられないことだ。
磯の香りが強いイカの塩辛や北海道特有の海の幸の保存食なども子供の頃は好んで食べなかったが、今は大好物となっているし、酢の物なども好んで食べる。
以前にも書いたが子どもの頃に酸味、苦味を拒絶するのは毒性のあるものを食べてしまわないように備わった人間の本能なので、単なる好き嫌いとは次元が違う。
そして、匂いのきついものや発酵食品を嫌うのも腐ったものを食べてしまわないように本能的に避けているので子供が嫌うのは自然なことだ。
それらのものを食べられるようにするのが親の教育であったりしつけである訳だが、そんなにうるさく言わなくても年齢を重ねれば自然に食べられるようになるのだから不思議ものである。
これも何度も書いていることだが、テレビ番組の好みも大きく変わった。
最近のテレビがあまりにもつまらないというのもあるが、芸能人が集合してガチャガチャと騒いでいるような番組には一切の興味を失い、何かのテーマに真摯に取り組むような番組を好んで見ている。
そして、最近は聞き取る能力が衰えてきたのか、あまりにも早口でまくし立てられると何を言っているのか分からない。
子供の頃、紳助竜介の漫才を見た親が
「すごい早口だから何を言っているのか分からない」
と言うのを聞いて、そんなことがあるのだろうかと思っていたが、2013年末の 『THE MANZAI』 で優勝したウーマンラッシュアワーの漫才を見た時に何をしゃべっているのかまったくと言っていいほど聞き取れない自分がそこにいた。
その漫才で会場の人は笑っていたので若い子は十分に聞き取れているのだろう。
そういうこともあってか、落ち着いて見られる番組ばかり選ぶようになった結果、我家の場合は選ぶチャンネルの 90%以上がテレビ東京系ということになっている。
しかし、民放キー局が売上高、純利益とも前年実績を大きく下回る中、唯一伸びを見せたのがテレビ東京であったことからも、他局は番組制作能力が低下しているがテレビ東京だけは視聴者が満足する番組を作り、スポンサーからも評価されていることになるのだろう。
したがって、我が家だけがテレ東を好んでみている訳ではないだろうから好みが変わったというより他局がだらしないだけかもしれない。
いろいろと趣味嗜好が変わる中、音楽の好みは変わらない。
邦楽は聴く価値もないと感じるようになったことや、洋楽であっても最近の曲は面白みに欠け、聴いていてつまらないと独り言にも書いたが、Jangoというアプリで洋楽を聞くようになってから益々その思いを強くした。
十代の頃に聞いていたハードロックなどを選んで再生すると、やはり当時の曲は素晴らしい。
当時、親からは
「そんなガチャガチャした曲なんか聴いて」
と小言を言われ、
「うるさいだけで何が良いのか分からない」
と虐げられていたが、今聴いても良いと思うのだから好みが変わっていないのだろう。
そこで思うのは、今の自分は当時の親と同じ感覚で、今の若者は当時の自分と同じ感覚なのだろうかという素朴な疑問だ。
つまり、自分は今の曲をうるさいと思うしつまらないと思っている。
しかし、今の若者はうるさく思わず、良い曲だと感じているのか。
これから 20年後、30、40年後に今の曲を聴いたなら、30、40、50歳になっている今の若者は懐かしさを覚え、やはりあの頃の曲は良いと感想をもらすのだろうか。
とてもそうは思えない自分は時代に置いて行かれたのだろうか。
脳や思考の柔軟性を失い、新しいものを受け入れられなくなってしまったのだろうか。
単なる爺さんになってしまったのだろうか・・・。