自分はちょっとしたサヴァン症候群なのではないかと思う。
サヴァン症候群とは、知的障害があったり自閉症の人のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。
たまにテレビとかで紹介されるが、音楽を一度聞いただけで完全に覚えることができたり、歴史の西暦や電話番号、誕生日など数字に関連した膨大な情報を記憶したり、一度見たものを映像として細部まで記憶したりする能力の持ち主だ。
自分の場合は知的障害はないと思われるし、自閉症だと自覚していない。
いや、仕事以外で人付き合いするのは面倒だし、何時間でも何日でも人と話さなくても平気なので少し自閉症気味である可能性はある。
そんな自分にどんな能力があるかといえば、やたらと図形に強いことだ。
サヴァン症候群の人みたいに天才的ではないし、歳とともに衰えてきているので軽いサヴァン、ちょいサヴァといった程度ではあるが、明らかに人とは違っていた。
図形を細部まで瞬時に記憶することはできないが、長く見ていたものは確実に脳に刻まれる。
若かりしころに交通事故にあって頭を打ち、病院に運ばれた際に検査を受けたのだが、あまりにも項目が多くて面倒になってきたことと、相手の態度に腹が立ったこともあって質問に対して適当に答えていたところ、入院が必要と判断されてしまった。
慌てて非礼を詫び、真剣に答えるとすがってみたが、相手も態度の悪い自分に腹が立っていたのか許してもらえず、そのまま神経科に運ばれてしまったのである。
そこが大学附属病院だったのも災いし、まるで実験台のように次の日から鬼のような勢いで様々な検査をされた。
今から考えるとどう考えても不必要だと思われるのだが、地獄に堕ちたほうがましなほど痛い脊髄注射を何度もされ、かなりな量の脊髄液を抜かれたように思う。
脳波検査中に訳の分からない注射をされて気を失い、目を覚ました時には病室のベッドに寝かされていたこともしばしばだ。
検査中は 5-6人の若い男女が周りにいたが、それは白衣は着ていたものの大学の生徒といった感じで、検査というより実験を見学しに来ている雰囲気だった。
受けさせられた様々な検査の中に、まるで小学生に出題されるような知能検査があったのだが、国語、算数など平均でしかなかったのに図形に関しては飛び抜けて IQが高く、検査した側がその結果を信じられずに何度も何度も図形問題を解かされた。
実際の数値を書くと人からドン引きされるので伏せるが、アインシュタインのIQを軽く超える値だったのは間違いない。
その頃は絵の勉強をしていて毎日のように図形を書いていたことも影響していただろうが、他のことはすぐに忘れるくせに絵や図形に関してだけは確かにいつまでも記憶に残っている。
小学校の低学年のことは覚えていないが、一定以上の学年になってから、現在に至るまでに描いた何百、何千という絵はすべて記憶していると思う。
そして、コンピュータ業界に入ってから作成した膨大な数の CG、ドット絵も記憶に残っている。
今は記憶容量が増えたので手法がことなるが、以前のゲームは 255個の部品の組み合わせで背景を描き、255個の部品で動くキャラクターを構成していた。
体調を崩して仕事を休んだ時、どうしても分からないことがあると会社から電話があり、その説明をする際に右から何番目、上から何番目の部品と、あの部品と、この部品を組み合わせれば背景のどの部分ができるということをパソコン画面も見ずにスラスラ答えて驚かれたこともあった。
今まで作成した Webページのデザインもすべて覚えているが、どういうコードを書いたのか覚えていないので修正作業をする際にはコードを思い出すのに苦労をしてしまう。
年齢とともに以前ほどの記憶力がなくなったので今はビックリするほど IQも高くないだろうが、それでも図形に関しては人と違うのではないだろうか。
スマホにしてからゲームアプリを楽しんでおり、その中でも実に面白く 『お買い物日記』 担当者と遊びまくっているゲームがある。
それは人気のゲームでシリーズ化されており、すべて合計すると1000を超えるステージがあるのだが、その画面をすべて記憶していると思う。
パズル的要素があるゲームで、『お買い物日記』 担当者がクリアできずに困っていると、その画面を見ただけで自分がどうやってクリアしたのか思い出す。
などと自慢げに書き綴ってきたが、結局はその程度のことである。
多少は仕事に役立つこともあるが、多くの場合は必要とされない。
こんなことの能力が少しばかり高くても何の役にも立たなかったりするのである。