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輿論と世論輿論と世論

輿論 (よろん) と世論 (せろん) は似て非なるものである。 単なる世論調査でしかないくせに、ことのほか重要なデータであるかのように取り上げるマスコミは問題だ。 また、世論(せろん)は 【よろん】 とも読めるが故に混同されやすいのも事実ではある。

人々が考えて回答したものを集約した公的意見が 『輿論(よろん)』 であり、世の中のムードや好き嫌いのようなボンヤリしたものが『世論(せろん)』 であるにも関わらず、世論調査の結果が国民の声や意志であるかのように判断するのは危険だろう。

あくまでも世の中の雰囲気でしかない世論が国政に影響を与えるような重要な問題を尋ねる調査で簡単に使われているのもどうかと思う。 一般人は政治のことを深く考え、理解し、確固たる信念を持ち、自分の意見として回答している訳ではないだろう。

自民党がアホだとか民主党は幼稚だとか、麻生太郎がバカだとか小沢一郎の顔が怖いとか雰囲気や好き嫌いだけで回答しているのが大多数だと思われるし、そもそも世論調査では実施する側に有利な回答が導き出されやすく、誘導された結果が出て利用されやすい。

以前は対面調査で調査員と回答者が実際に会い、30分くらいかけて実施していたので、真面目に答えているのかも目を見れば判断できたし、回答する側も考える時間があったが、今は電話調査が主流になり、面倒だから早く切りたいという意識も働き、深く考えずに答えることが多いものと思われる。 かなり以前のことになるが TBS系の地方テレビ局から世論調査の電話を受けた自分もそうだった。

それはまだ橋本龍太郎総理大臣のときだったが、消費税率を 3%から 5%に引き上げたことによってバブル景気崩壊後、緩やかに回復軌道に乗りつつあった日本経済の足を引っ張る結果になったこともあって相当な批判を浴びていた時期であったことと、当時は政治に対してそれほどの興味を持っていなかったこともあって、世の中の流れに沿って橋龍批判をした記憶がある。

それも最初はちょっと真剣に答えていたのだが、質問項目が多くて面倒になってしまい、深く考えもせずに回答して早く電話を切ろうとしたのも事実であり、そうだったのは自分だけではないと十分に推測されることから、やっぱりそれは世論でしかなく、決して輿論などという高尚なものではないだろう。

これから益々ネットが普及し、そこで世論調査が行われる機会も増えるものと思われるが、そうなれば益々ボンヤリとした雰囲気だけの結果になるのではないだろうか。 無機質な文字データが並び、「はい」 「いいえ」 のラジオボタンが並んだ画面の前で人が真剣に考え、血の通った意見を導き出せるとは思えないし、そもそも 「はい」 「いいえ」 は決して意見ではないし、回答とすら呼べないようにも思う。

小泉首相が好きとか嫌いとかに関わらず郵政民営化は必要だと思っていたので政策を支持していた。 消費税なくしては今の日本は語れず、国は財政破綻を来たしていただろうから竹下首相があそこまで悪く言われる必要があっただろうか。 過去において、世論と自分の考えが同じ時期もあれば異なる時期もあった。

しかし、麻生首相に関しては褒めるべきところ、良いところが顕微鏡で探しても見つからないので、支持率を含めた世論調査の結果は、むしろ輿論に近いのかもしれないと思ったりしている。

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