− 第三章 再会編からの続き −
幸福の後に訪れた暗い日々。
中途半端な「ホンコン焼きそば」との再会が中毒症状を悪化させてしまったようだ。同僚が出張先で購入した数は 10食。「あまりにも熱心に話をするから自分も食べてみたくなった」とのことで、入手できたのは僅か 8食。いつものとおり、一度に 4食を調理したため、二回で終わってしまった。背景に咲き乱れていた花も散り、暗く長い日々が続く。
友人、親戚縁者に頼る日々。
以前住んでいた街にいる会社の後輩に中元、歳暮は「ホンコン焼きそば」と命令を下し、同じ街に住む友人からも数個ずつ送ってもらい、細々と食いつなぐ日々。兄弟からの誕生日のプレゼントにも「ホンコン焼きそば」をリクエストし、「インスタントは体に良くない」という親の助言をも無視して魚介、野菜類よりも「ホンコン焼きそば」を注文する日々。「あの街に帰りたい」「いつでも買える土地に引越したい」・・・。望郷の思いは募るばかりとなった。
理想と現実とは・・・。
友人に恵まれ、親兄弟の優しさに甘えながらも、やはり好きな時に好きなだけ「ホンコン焼きそば」を食べたい・・・。送ってもらった在庫を食べ尽くし、その後 1、2ヶ月間じっと我慢し、禁断症状が極限に達する前に在庫を手当てする・・・。いくら仲のいい友人や親戚縁者とはいえ、そう度々送ってもらうのは申し訳なく・・・。購入費、送料は銀行振込しているとはいえ、何度も手間をかけるのも申し訳なく・・・。大阪での入手を諦めることができずに新しい店、始めていく店では必ずインスタント食品のコーナーをチェックする日々。しかし、あの赤と白を基調とした目に鮮やかなパッケージを目にすることはなかった。
ついに決断の時が!
「ホンコン焼きそば」を気を使いながら送ってもらう日々に疲れ、大阪府内での捜索に身も心も疲れ果て、身体的にも精神的にも限界が近づきつつあるのを実感したある日、発売元、いや、製造元でもある S&B食品に電話し、大阪での入手方法を問い合わせるしか・・・。それしか平穏な生活を取り戻すことができない!と思い立つ。もう間もなく底をつく在庫を取り出し、「お客様相談センター」の電話番号を確認する。しかし、こんな間抜けなことを相談してもいいのだろうか・・・。などと考えると電話をする勇気が出ない。受話器を取り上げては戻すという行為を何度となく繰り返すが、そうしている間にも確実に在庫は減っていく。残された時間があと僅かとなったある日、意を決して受話器を取り上げ、勇気をふり絞ってダイヤルする。呼び出し音が 2度 3度繰り返され電話がつながった・・・。